ここまで8回にわたり「品質管理」をお伝えしてきました。今回と次回は、QCD(品質・コスト・納期)でのQ(品質)の次、2番目のC(コスト)を管理する「原価管理」の基本を紹介します。
ビジネスの基本は「安く造って」「高く売る」ことです。ここではものづくり現場の担当である前者、すなわち安く造るためのコストを中心に見ていきましょう。
ものづくりの出費を分解する
ものづくりの出費の総額を「総原価」といい、これは「製造のコスト」「販売のコスト」「本社のコスト」の3つの合計になります(図1)。製造のコストは、ものづくり現場で費やした費用です。材料費や労務費はこのコストになります。販売のコストは、営業活動に費やした費用です。営業マンの人件費や広告費といったコストになります。本社のコストは、経営企画部門、開発部門、経理部門、総務部門、人事部門といった本社機能で費やされるコストです。
会計用語では、製造のコストを「製造原価」、販売のコストを「販売費」、本社のコストを「一般管理費」といいます。簡単にいうと、製造原価は「造るために必要とした費用」、販売費と一般管理費は「売るために必要とした費用」と見れば理解しやすいと思います。
会社の1年間、もしくは四半期や半年間の経営成績は損益計算書に示されます。入金額である売上高と、出金額として記載されている「売上原価」「販売費および一般管理費」はまさにこれらの費用を表しています。売上原価は売れた分の製造原価のことで、販売費と一般管理費は、便宜上1つにまとめて「販売費および一般管理費」と表し、省略して「販管費」ともいいます。
上場している企業の損益計算書は一般に公開されているので、身近な企業のホームページをご覧になってください。
では、3つのうち、ものづくり現場が担当する製造原価を見ていきましょう。
1個当たりの製造原価をつかむ狙い
ものづくりでは、“製品1個当たりの製造原価”が何円になるのかは極めて大切な情報です。これにより計画通りの収益が得られているかを把握でき、さらなるコスト削減の取り組みを進めるのに役立ちます。また営業においては、利益率の高い製品の集中販売や、許容度を超えた値引きの防止といったマーケティング戦略に生かせます。
ただし、この1個当たりの製造原価の算出方法には確定的なルールや正解はありません。算出方法が法律で決まっている損益計算書とは異なります。原価計算にかける作業量に比例して原価の正確性も高まるので、作業負荷とのバランスで自社に適した算出方法を決めます。ここでは一般的な事例を紹介します。