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 少子高齢化に伴うベテラン社員の大量退職や人口減による優秀な人材の採用難、働き方改革による生産性の見直しや高度化など、日本における「働き方」は今大きな転換点にさしかかっている。その中で、ロボティクスや人工知能(AI)を活用した「人と機械の協働」が注目されている。これまで人間が労働集約的にやってきた作業を代替したり、作業自体を高度化したりできる可能性があるからだ。

 例えば日本の多くのプラント現場においては、設備の点検作業のほとんどをこれまでは人間が担ってきた。それを現場での情報収集はドローンによって自動化し、集めた情報の解析はAIに任せることで、人間はそれらの結果を基に次のアクションを検討し実行するという作業に専念できるようになる。こうした人間と機械の役割分担が、様々な業界で検討されている。

図●現状の現場点検作業フローと、将来的なドローン+AIと人の役割分担イメージ
図●現状の現場点検作業フローと、将来的なドローン+AIと人の役割分担イメージ
(出典:アクセンチュア)
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 本連載では実際のアクセンチュアの取り組みに基づいて、ロボティクスとAIを実務で活用する際のポイントを解説する。具体的にはアクセンチュアと産業ドローンメーカーの自律制御システム研究所が共同で取り組んだ、ある製油所プラントにおける設備点検の自動化事例を取り上げる。設備点検の自動化は製油所に限らず様々な業種において課題になっていることだろう。熟練運転員の技をどのようにドローンとAIに「伝承」させたのか。4回にわたって解説する。

国のガイドライン策定で、プラントでのドローン活用機運が高まる

 まずは具体的な事例に入る前に、日本におけるドローンとAIを取り巻く状況について確認しておこう。

 これまで日本でロボティクスというと、特に製造業の分野では産業ロボットによる自動化や効率化が中心だった。それが近年はAGV(Automatic Guided Vehicle、自律走行車など)とUAV(Unmanned Aerial Vehicle、ドローンなど)が注目されている。どちらも用途はさまざまだが、人間がこれまで労働集約的にやってきた点検・確認作業や運搬作業などの代替として活用を検討する企業が多い。

 特にドローンに関しては、国土交通省航空局が飛行に関する規定として「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」を策定し、さらに火気の取り扱いに注意が必要なプラントでのドローン活用に向けて、総務省消防庁・厚生労働省・経済産業省の3省が合同で「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」を策定したことから、これをプラントで活用しようとの機運が高まっている。

 一方、現場でのドローン導入には課題も多い。道路・河川・港湾・私有地などドローンが飛行するルートに応じて複数の関係各所との事前調整が必要であったり、バードストライクや電波障害が発生した場合のリスク対策についても事前に十分な対策を練る必要があったりと、各社ともに限定的な活用に留まっているのが現状だ。

目的が曖昧なPoC(概念実証)も横行

 AIに関しては、人間が担ってきた判断作業をAIに代替する取り組みや、ビッグデータ解析による新たな気付きの導出など、社内業務における業務効率化や高度化が進んでいた。それに加えて近年は、顧客との会話を音声認識して適切な回答をサポートするといった顧客体験向上にAIを活用する事例も出始めている。