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 新型コロナウイルスの感染拡大の切り札として注目を集める深紫外線による不活化・殺菌技術。病院や空港、交通機関、小売店など、不特定多数の人が訪れる場所で広がりを見せている。一方、家電や自動車といったコンシューマー分野でも注目を浴びている。

 コンシューマー分野で、深紫外線を利用した殺菌機能が大きなセールスポイントになる可能性が出てきた。日本ではかねて注目されていたが、米国でもその動きが盛んになりつつある。例えば、深紫外線ランプを備える布団掃除機「レイコップ」シリーズ。コロナ禍を機に、米国での売り上げを伸ばしている。米RAYCOP North Americaによれば、2020年春、米国でのレイコップの売り上げは前年比で「4~5倍」(同社CEOのHirobumi Suzuki氏)と、想定外の売れ行きを見せている。

レイコップの布団掃除機
レイコップの布団掃除機
(出典:RAYCOP North America)
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 もともと、春は花粉やほこり、ダニなどへのアレルギー対策として売れ行きが伸びる時期だ。さらに、米テレビショッピングの大手QVCとタッグを組み、特別なプロモーションを実施してきた。それでも、想定以上の売れ行きを記録したことから、レイコップは、新型コロナが売り上げ増に影響した可能性が高いとみている。

 もっとも、レイコップでは、「新型コロナウイルスを不活化できる」とはうたっていない。これまでと同じく、深紫外光を照射すると、布団表面の細菌やウイルスの増殖を抑制できる、ダニの動きを抑制したり、ダニの卵をかえりにくくしたりするという効果をウリにしているにとどまる。それでも、深紫外光は殺菌に効果があり、新型コロナウイルスを不活化させる可能性が高いことが以前から指摘されていたことから、「今春、想定を超える売り上げ増につながったのではないか」(Suzuki氏)とみている。こうした状況で、自宅外でもレイコップの需要があると考え、携帯できる小型のレイコップを準備中だ。詳細は不明だが、2020年秋の発売を予定している。

RAYCOP North AmericaのSuzuki氏
RAYCOP North AmericaのSuzuki氏
(出典:RAYCOP North America)
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 深紫外線光源の搭載をウリにする空気清浄機も米国で登場してきた。例えば、韓国ソウルバイオシス(Seoul Viosys)は同社の米子会社と共に、深紫外線LEDを搭載した個人向け空気清浄機「VAC」を2020年6月に米国と韓国で発売すると同年5月に明らかにした。同社グループには、白色LEDを手掛ける韓国ソウル半導体(Seoul Semiconductor)がある。この空気清浄機では、フィルターに深紫外線を照射し、フィルターに付着する細菌の増殖を防止するという。ただし、深紫外線は新型コロナウイルスの不活化に効果があるものの、同清浄機での効果は不明である。