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 新型コロナウイルス感染の危険に身をさらしながらも、懸命に働いているのが最前線にいる医療従事者である。その支援のために、人となるべく接することなく診断できる機器やサービスが米国の医療施設で急速に普及している。ここで武器となるのが、ロボットやAR(拡張現実)だ。さらに、医療施設に行かなくても自宅で新型コロナ感染の予兆を測定する機器やアプリにも注目が集まる。医療施設への不要な往来を減らして利用者の感染リスクを抑えるだけでなく、医療現場の負荷を軽減できる。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、最も大きなリスクにさらされているのは病院や診療所などで働く医療従事者である。特効薬やワクチンが開発されていない状態で、不足がちな医療用マスクや防護服を身に着けて、患者の診察や治療にあたる。実際に感染していない人も医療施設に押し寄せて、現場の混乱に拍車をかけている。

 こうした状況に対し、テクノロジーを活用して解決を図る動きが米国で活発になっている。医療従事者向けだけでなく、診察を受ける側の利用者向けもある。症状を早期に推定できれば適切な行動が取れるため、感染拡大や無駄な医療機関への受診を減らせる。行政や医療機関は収集したビッグデータを活用した予測によって先回りで対処できるようにもなる。

 IoT機器で新型コロナの感染拡大の予兆をできるだけ早く捉える。そんな取り組みを始めたのは、米サンフランシスコのスタートアップのキンサ(Kinsa)だ。もともとキンサは、スマートフォンとBluetoothで接続する同社のスマート体温計から体温データを集めて解析して、インフルエンザの感染拡大を予測してきた。高熱の利用者が急増すれば、そのエリアにおいてインフルエンザが流行する可能性があると予測する。日本でも、インフルエンザ薬の処方箋を基に流行を予測する取り組みがある。これに対してキンサの手法だと、人々が病院にかかる前のより早いタイミングで予兆を捉えられるという利点がある。

キンサのスマート体温計とスマホアプリ
キンサのスマート体温計とスマホアプリ
(撮影:シリコンバレー支局)
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