3次元データの活用など設計の高度化が進む一方で、単純ミスが絶えない。設計者だけでなく発注者や施工者もミスを見逃し、是正に手間を要するケースも。最新の事例をクイズ仕立てで取り上げる。

設計ミスはなぜ起こった?
目次
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吸収エネルギーは2倍超、岸壁に過大な防舷材を誤って選定
接岸した船舶がぶつかっても損傷しないように、岸壁に取り付ける防舷材。石巻港の岸壁の設計業務を受託したダイヤコンサルタントは、必要以上に過大なエネルギーを吸収できる規格の防舷材を誤って選定。建設会社が間違った設計のまま防舷材を施工した結果、工事費が3210万円も割高になった。設計者は防舷材に求められ…
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水面下の鋼矢板だけ先に防食、「適切でない」と会検指摘
茨城県が実施した波除堤の延命化工事で、会計検査院の指摘を受けた。鋼矢板の電気防食が施されていたものの、被覆防食が施されていないというのが理由だ。一方、県は「2種類の防食工を実施しなければならないことは認識していた」と主張。では、なぜ被覆防食を施工していなかった?
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延長91mの落石防護柵、コスト削減の見直しがあだに
鳥取県が県道沿いの91mにわたって整備した高エネルギー吸収落石防護柵が、所定の高さを満たしていなかった。ミスを犯したのは県の職員。なぜ、このような事態になった?
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巨石積み護岸の基礎が露出、完成から数年で
台風で被災した護岸を、巨石を積み上げて復旧した。ところが、完成からわずか数年後、会計検査院の実地検査で護岸の基礎に洗掘が見つかった。設計者と施工者が繰り返したミスを、発注者が見抜けなかったのはなぜ?
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橋の添架管支持金具に強度不足、責任は誰に
橋の架け替え工事後に取り付けた添架管の支持金具に強度不足が判明。補修費の9割を発注者と支持金具のメーカーが負担した。設計した建設コンサルタント会社の費用負担が1割にも満たなかったのはなぜ?
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船が橋をくぐれず、上流と同じ桁下高なのに
横浜市は新設する橋の桁下高として、航路限界である3.5mを確保。約100m上流に架かる既設の橋桁に書いてあった「桁下3.5m」という表示などを参考にした。ところが、桁の架設直後に観光船の運航会社が「船が橋をくぐれない」と訴えた。なぜこんな事態になった?
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「損傷の恐れあり」、既設護岸を補強したのに
湾曲部外側の既設護岸を根継ぎ工と根固め工で補強した。ところが、会計検査院は既設護岸が損傷する恐れがあると指摘。何がおかしい?
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鉄筋かぶり11cmを確保、それでも「不足」
設計者は、底版の主鉄筋の中心からコンクリート表面までの芯かぶりを規定通り11cm確保して設計。ところが、発注者は「鉄筋のかぶり不足が判明した」として、設計者を1カ月の指名停止に。どこが間違っていた?
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半世紀前の岸壁を延命化、再現設計に誤り
1962年度に建設した岸壁を延命化する。鋼矢板の長さが不明だったので、1999年の基準に照らして長さを推定し、電気防食材を取り付けた。ところが、会計検査院が過大な設計だと指摘した。なぜ?
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L形擁壁の安定計算、「安全でない」理由は
東日本大震災で被災した護岸を復旧するため、プレキャストL形擁壁を築造した。自重や土圧を基に安定計算を実施したが、会計検査院は安全でないと指摘。何を間違った?
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橋脚に亀裂発生、上部工は軽くなったのに
下流側の車線を通行止めにして、劣化した橋桁と鉄筋コンクリート(RC)床版を撤去。鋼床版鈑桁に架け替える。上流側を片側交互通行で供用しながら施工していたところ、橋脚の下流側の側面にひび割れが見つかった。施工中や施工後は上部工の自重が軽くなるはずなのに、なぜ?