全1930文字
PR

接岸した船舶がぶつかっても損傷しないように、岸壁に取り付ける防舷材。石巻港の岸壁の設計業務を受託したダイヤコンサルタントは、必要以上に過大なエネルギーを吸収できる規格の防舷材を誤って選定。建設会社が間違った設計のまま防舷材を施工した結果、工事費が3210万円も割高になった。設計者は防舷材に求められる性能を正確に把握していたのに、なぜ過大な防舷材を選んでしまった?

 宮城県は東日本大震災の復興事業の一環として、石巻市にある石巻港の整備を進めている。完成は2021年3月の予定だ。

 同港にある延長360mの日和岸壁の一部は17年8月に先行して完成し、同年9月に暫定供用を始めた。日和岸壁と付近の防潮堤を含む設計はダイヤコンサルタント(東京・千代田)が12年3月、1億7510万円で受託。約2年間かけて検討を進めた。

石巻港にある日和岸壁の全景(写真:宮城県)
石巻港にある日和岸壁の全景(写真:宮城県)
[画像のクリックで拡大表示]
日和岸壁に防舷材を設置した際の様子。吸収エネルギーが大きすぎる防舷材を誤って取り付けたことは、施工中には分からなかったという(写真:宮城県)
日和岸壁に防舷材を設置した際の様子。吸収エネルギーが大きすぎる防舷材を誤って取り付けたことは、施工中には分からなかったという(写真:宮城県)
[画像のクリックで拡大表示]

 石巻港を管理する県石巻港湾事務所は暫定供用開始後の17年11月、岸壁での荷役を予定する企業から、日和岸壁の構造について問い合わせを受けた。企業は危険物の荷役で海上保安庁の許可を得るため、岸壁の構造を把握する必要があったという。

 問い合わせを受けて日和岸壁の構造を確認したのは、岸壁の設計や施工に直接関わらなかった同事務所工務班の職員だった。職員は記憶の中にある過去に見た別の岸壁と比べて「防舷材が大きすぎるのではないか」と直感的に疑問を抱いた。同事務所がダイヤコンサルタントに確認したところ、必要以上に高規格の防舷材を選んでいたことが判明した。

 日和岸壁の44カ所に取り付けた防舷材の長さは1.5m。最大2000トンの船舶の接岸に対応できるように計算上、1カ所当たり34.05kN・m以上のエネルギーを吸収できるようにする必要があった。防舷材の長さ1m当たりに換算すると、必要な吸収エネルギーは22.7kN・m以上となる。

 ところが、ダイヤコンサルタントの設計に基づいて実際に設置した防舷材は、吸収エネルギーが1m当たり61.3kN・mもある規格の製品だった。必要な防舷材よりも吸収エネルギーが2倍超もある大きなサイズの製品が取り付けられていた。