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「受注減のため売上高がゼロ。社員は一時帰休としている」「在宅勤務だが通信環境が未整備で業務に支障を来している」─。日経ものづくりが実施した「新型コロナ流行の製造業に与える影響と今後の対策に関する調査」に関するアンケート調査の自由記述欄には、新型コロナによる受注の減少・消滅や、在宅勤務下での業務の困難を訴える声が目立った。特に興味深い回答について電子メールで追加取材。製造業の最前線に立つ経営者や設計者、製造・工場の現場に立つ作業者などの生の声を紹介する。

需要減少 開発・設計
顧客要請で開発を減速、損益分岐点引き下げのため経費も締め付け

 新型コロナの下、顧客が先々の業績不振を織り込んで新規開発計画を見直す動きがある。当社も新規アイテムの開発を3~5カ月程度遅らせるように指示されている。そのため、全社的に開発をスローダウンさせたり、量産品の生産時期をスライドさせたりし始めている。

 社内の経費への締め付けも厳しくなっている。受注した開発の後ろ倒しは、受注量、ひいては売上高と利益の減少を意味するのだから無理もない。危機感が高まっている経営陣は損益分岐点を引き下げる必要性を強調する。

 そのため、コストダウンはもちろん、生産性向上や設備の最小化、管理部門・人員のスリム化など、固定費の減少を意識して業務にあたるように全社員に求めている。(機械部品・電子部品メーカー、設計)

需要減少 雇用調整
金型製作受注減で6月の売り上げゼロ、雇用助成金で息継ぎ状態

 当社はプラスチック金型メーカーだ。コンパクトカメラのズーム機構部の鏡筒部品向けの金型を得意分野としており、交換レンズや継手などのねじ部品の金型を中心に製作している。金型製造は完全な受注型ビジネスなので、市場に投入する商品が無ければ仕事がなくなる。

 1990年代後半のバブル崩壊後でも、カメラメーカーの新製品投入で金型はそれほど落ち込まなかった。2008年のリーマン・ショック後は、市場の様子をうかがっていたメーカーによるプロジェクトの延期・中止が続き、当社はリストラをせざるを得なかった。今回の新型コロナでは、欧米市場の購買意欲が落ち込んでおり、しばらくは様子見の状態が続くとみている。金型メーカーの立場から言うと、「受注の大幅な減少が続く」と予想している。

 現実に、新規の金型の見積もり依頼は2月から半減。4月からは受注が止まり、6月の売上高はゼロに近い。このため上流工程の「設計」から手が空き始めた。見積もり依頼が増えない現状では4カ月先までは受注は増えず、7月以降も厳しい状態が続くと考えている。定期的に電話営業を続け、メーカーが動き出すのを待つしかない。

 当社が手掛ける金型は一般に、受注後30~45日程度で出荷するので、1カ月半先までは仕事があるのが望ましく、2カ月先まで埋まっていれば調子が良いといえる。しかし、現在(2020年5月14日時点)は、5月中に3型の金型を出荷すると新規の金型製作の案件は無くなる。

 現状では、まもなく金型の手配が始まる新機種向けに10型程度の見積もりを出している。これを全て受注できれば良いが、1〜3型程度の受注にとどまるのが通常だ。当社の1カ月の製作能力は6~8型なので、会社全体を回すのには受注が不足している。金型の手配が先送りされる可能性もある。

 しかも現時点では電話での営業しかできない。加えて成形メーカーは医療や食品、半導体産業向けの仕事で忙しいようで、それらの量産品の対応に追われている。新規の金型立ち上げに人を割ける状況にない。つまり、必ずしも新規金型を手配する流れではないようだ。周辺の同業者からも、BtoBの金属加工業はこれから急速に落ち込んでいくと覚悟しているとの声を聞く。

 だからと言って全社で休業するわけにはいかない。金型の修正・改造があるからだ。4月は2時間かけて電車通勤している従業員1人に休業してもらい、ゴールデンウイーク明けからは毎日、何人かずつ休業させている。5月半ばからは休業させる人数も増やした。一時帰休として雇用助成金を申請し、平均賃金の60%を支給している。

 このまま受注が増えなければ6月下旬まで従業員を半数ずつ休業させ、交代で出勤させる状況が続くだろう。(金型関連メーカー、営業)