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 新型コロナウイルス対策を契機に、人工知能(AI)を使った画像診断支援ソフトウエアの医療現場への導入が進みそうだ。医師が画像診断するときに使う「PACS(医療用画像管理システム)」や「読影ビューアー」のメーカーが、新型コロナ対策でソフト開発を加速させ、普及を後押ししているからだ。

 例えばPACSの国内シェアトップの富士フイルムは2020年5月、新型コロナ肺炎などの間質性肺炎の胸部CT画像診断を支援するソフトについて、神奈川県立循環器呼吸器病センターと共同研究を始めた。新型コロナ患者の胸部コンピューター断層撮影装置(CT)画像を評価するなどしている。

 同ソフトはもともと2019年4月に京都大学との共同研究で開発したものだ。深層学習を使っていて、CT画像から間質性肺炎の重症度を定量的に評価したり、症状の所見などを分類して表示したりする機能を備えている。医療機関から、新型コロナ向けに使いたいという問い合わせがあったことから、富士フイルムは新型コロナ肺炎で特徴的に見られる「淡いすりガラス陰影」を表示するように改良して提供しているという。

富士フイルムが開発中の新型コロナ肺炎患者のCT画像と解析結果
富士フイルムが開発中の新型コロナ肺炎患者のCT画像と解析結果
(出所:富士フイルム)
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 同社は今後、京都大学とも共同研究を進める。計100例ほどの症例を検証し、診断支援などでの有効性を確認して、厚生労働省に承認申請する予定だ。

新型コロナで承認審査が優先に

 AI画像診断支援ソフトの普及を阻んできた壁の1つは法規制だった。同ソフトを医療機関で使うためには、医薬品医療機器等法に基づいた製造販売承認を受ける必要がある。これまで承認を受けたAI画像診断支援ソフトは数件あるだけだ。

 ただこうした壁が崩れようとしている。承認のための審査には半年以上かかるのがこれまでの通例だったが、厚労省は2020年4月13日に新型コロナ関連の医薬品や医療機器などの承認審査を優先するとの事務連絡を発出した。

 例えば新型コロナに関連して胸部CT画像から肺炎を検出するAI画像診断支援ソフトは、申請からわずか3週間余りで承認された。2020年6月3日のことだ。同ソフトは、中国のAIスタートアップであるインファービジョンが開発し、日本のCESデカルトが製造販売を担う。

 さらに、新型コロナによる肺炎を胸部CT画像から検出するソフトについて、2020年6月初めにエムスリーが製造販売承認を申請している。6月中に承認される見通しだ。同ソフトは中国のアリババ集団が開発したAIを使っている。