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 新型コロナウイルスの院内感染を防止する目的で、患者が自分のスマホなどで問診を受けられる「AI(人工知能)問診」が注目を集めている。コロナ禍で負担が増えている医療機関の業務の一部をAIが肩代わりし、医療従事者の負担軽減を目指すサービスも登場した。

コロナ感染の疑い、AIが21万人を「問診」

 有志団体である一般社団法人日本医療受診支援機構は2020年4月28日からWebアプリケーション「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」を無償提供している。同アプリは、AIを使った医療向けシステムを開発するスタートアップであるUbie(ユビー)が開発した「AI問診Ubie」を新型コロナに対応させたものだ。

 利用者がスマホなどで入力した「頭が痛い」「熱がある」などといった症状を基に、AIが病気の緊急度や新型コロナの感染リスクを推測。帰国者・接触者相談センターに相談したり、かかりつけ医の指示を受けたりといった適切な受診行動を提案する仕組みだ。

「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」の概要
「AI受診相談ユビー新型コロナウイルス版」の概要
(出所:Ubie)
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 「病気の症状を自覚しても、院内感染を恐れて受診を控える人を減らしたい」。医師でUbieの共同代表を務める阿部吉倫氏は無償提供の目的をこう明かす。2020年4月、「医療崩壊」の懸念が強まった。新型コロナの感染者や感染を疑う人が病院に押し寄せて、医療機関の受け入れ能力を超えるとの懸念だ。

 特に新型コロナの感染が疑われる患者をそうとは知らずに受け入れることで起こる院内感染が、医療崩壊の引き金となるケースが多かった。欧米諸国ほどではないにせよ、日本でもピーク時は病床の空きがなくなりひっ迫した状態に陥った。医療機関が新型コロナのクラスターとなる事例が相次いだことで、他の疾患を持つ患者の間に受診を自粛する「受診控え」も広がった。

 無償提供するAI受診相談ユビー新型コロナウイルス版の狙いは、利用者に適切な受診行動を支援することで医療崩壊と受診控えの両方を解決する点にある。スマホやパソコンで年齢や性別、主要な症状を入力すると、AIが具体的な病名を推測しながら20問前後の質問を出す。AIは回答結果に応じて、参考として病名の代表例や相談先を複数提示する。

 Ubieによれば2020年6月2日までにAI受診相談ユビー新型コロナウイルス版を21万人が使っている。「うち数千人には新型コロナの感染が疑われたため、AIが帰国者・接触者相談センターへの相談を勧めた」(阿部共同代表)という。

約5万件の医学論文から抽出したデータに基づいてシステム構築

 2017年創業のUbieは2018年から医療機関のカルテ作成業務などの負担を減らすサービスとしてAI問診Ubieを提供している。既に全国200以上の医療機関が導入している。

 利用者は病院の受付で渡されたタブレット上でAIによる問診を受ける。AIは利用者が入力した内容を専門用語に変換するため、医師は電子カルテにそのまま記入できる。

 UbieはAI問診Ubieの原型を約5万件の医学論文から抽出したデータに基づいて開発した。患者の回答内容に即して約3500種類の質問データからAIが適した次の質問を選ぶという。

 同社は2020年5月11日、AI問診Ubieの拡張機能である「COVID-19トリアージ支援システム」の提供も開始した。AI問診Ubieを導入済みの医療機関は無償で使える。