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 DX(Digital Transformation)時代の情報システムの鍵となるのが「アジリティー、スピード」だ。これらを実現するのに欠かせないITアーキテクチャーの要素に、「マイクロサービス」がある。今回は、その特徴と導入方法を見ていこう。

「アジリティー、スピード」追求が結実

 マイクロサービス、またはマイクロサービスアーキテクチャー(MSA)は個別に開発された小さなサービスを組み合わせて1つのサービスを構成するITアーキテクチャーである。米国を中心に先進的なIT企業で盛んに導入されている。

 日本では経済産業省が2018年に発表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」に、今後活用すべき技術の1つとしてマイクロサービスが紹介されていたことでも注目を浴びた。この発表以降、マイクロサービスは「ITシステムの複雑化を解消する特効薬」のように語られることさえある。

 しかし、現実はそう単純ではない。従来のエンタープライズシステム開発の延長線上でマイクロサービスを捉えていては、導入や活用は難しい。ここでは理解を深めるため、歴史的にどういった経緯でマイクロサービスが登場してきたかを振り返る。歴史的背景を把握すれば、古いエンタープライズシステム開発との違いや、マイクロサービス導入の勘所も分かりやすくなるはずだ。

 マイクロサービスの導入で先頭を走る企業としては、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)、米Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)、米Netflix(ネットフリックス)など米国のWebサービス勢が有名である。これらの企業はビジネスの変化に対応するために必要な「アジリティー、スピード」を獲得するため、自社の情報システムに対して新しい開発手法やITアーキテクチャーを継続的に取り入れてきた。マイクロサービスの導入も、この流れに沿ったものだ。

情報システムの「アジリティー、スピード」を高めるための手法の変遷
情報システムの「アジリティー、スピード」を高めるための手法の変遷
(出所:野村総合研究所)
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 昔のエンタープライズシステムは全体が1つのソフトウエアモジュールで構成されたモノリシック(一枚岩)な構造が多く、開発手法はウオーターフォールが主だった(上図の左端「モノリス・ウオーターフォール」)。ところが次第に顧客(一般消費者)が利用するWebサービスを提供する企業が増えると、こうした従来の手法では開発に対応しきれなくなってきた。