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 ここまでの解説で、データ活用基盤に必要な機能の概要は押さえられた。それを踏まえて、データ活用基盤を構築する際のプロジェクトの進め方を紹介する。

 前回の記事で、データ活用基盤の構築に当たっては「ビジネス上の目的を整理し、それを達成できる基盤の全体像を描くこと」「全体像を踏まえつつ、最初は小規模に構築を始めること」が重要であると述べた。

 そのためには、下図に示すように5段階のタスクに分けて構築プロジェクトを進めるとよい。

データ活用基盤の開発プロジェクトの進め方
データ活用基盤の開発プロジェクトの進め方
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〔1〕データ活用要件の整理

 まずは、自社のビジネスにおいて達成したい目的を決め、それを満たすデータ活用の方針を整理しよう。続いて現場の声などを聞きつつ、「データ活用の具体的な用途は何か」「どんなデータが必要か」をまとめる。併せて、既存システムのデータ資産の棚卸し情報や、データを活用して開発したい新サービスの概要も把握しておきたい。

 以上を参考に、既存の、あるいは将来対応が必要となるデータの種類や構造を整理し、データ活用基盤で管理すべきデータの範囲や、満たすべきシステム要件をまとめる。

 ちなみにここまでの情報の洗い出しによって、将来必要となりそうなデータ容量についても概算できるはずだ。データ開発基盤の構築費用を試算する際に参照しよう。

〔2〕現行システム整理

 自社の既存システムの現状、抱えている課題、保持しているさまざまなリソースを整理しよう。すると、既存システムのどの範囲をデータ活用基盤で活用できるかが見えてくる。使えそうな既存システムは、積極的にデータ活用基盤と連携させるとよい。さらに既存システムの将来的な改修計画についても調査し、データ活用基盤の構築スケジュールと照らし合わせて不整合が起きないかも確認しておきたい。

〔3〕技術動向調査

 直近の技術トレンドや先進的なデータ活用方法を調査し、自社のデータ活用基盤に盛り込むべきか検討する。ベンダーなどから技術や事例の情報を収集するとよい。近年の技術の進化スピードは速いため、一度だけでなく必要に応じて随時調査をかけ、情報をアップデートするのが望ましい。

 古い技術やアーキテクチャーを使い続けると、年を追うごとにメンテナンスなどに必要な人材が枯渇していき、その結果コストがかさんでしまう。トレンドに沿った技術を採用することで、コストを抑えつつ、長期にわたって活用できるデータ活用基盤の構築を目指そう。

〔4〕システム全体像整理

 〔1〕から〔3〕でまとめた結果を踏まえ、データ活用基盤のシステム化の方針、システム全体の構成イメージを固めていく。全体像を描く際には前述のレファレンスアーキテクチャーなどを参照し、検討項目に抜け漏れがないかチェックするとよい。

 例えば自社で利用する予定のデータ処理方式に従って、必要な機能・非機能をまとめ、具体的な要件を策定するといった作業だ。そのほか、扱うデータの種類や自社の組織構造を考慮し、データ活用基盤の運用方針も定めていく。例えば機密情報の管理方針などを検討することになるだろう。

〔5〕全体プラン作成

 〔4〕でまとめた要件を参照しつつ、構築すべき機能に優先順位を付ける。それを基にデータ活用基盤の構築ロードマップを作成し、機能単位や時期ごとにスコープ(範囲)を区切ってゆく。各スコープのコストを概算し、リスクや課題も洗い出しておこう。こうした作業は、スモールスタートで必要な機能から順番に、かつ迅速に構築を進めるために必要となる。

「構築して終わり」ではない、後のメンテナンスも重要

 〔1〕~〔5〕のタスクをこなしてデータ活用基盤を構築したら、それで終わりというわけではない。ビジネスの状況の変化や社内ユーザーのニーズの変化に応じて、データ活用基盤の機能にも見直しをかける必要がある。

 新たに必要な要件が出てきたら、既存のデータ活用基盤の全体像を踏まえつつ、最適な形で新機能を追加していきたい。そのためには、当初から柔軟性・拡張性を踏まえたデータ活用基盤を設計しておくことが重要だ。こうして試行錯誤と改良を繰り返しつつ、常に自社に最適なデータ活用基盤を維持していける態勢を作るのが最終的な目標となる。

野村 敏弘(のむら としひろ)
野村総合研究所 ITアーキテクチャーコンサルティング部 副主任システムコンサルタント
野村 敏弘(のむら としひろ) 2016年、広島⼤学⼤学院⼯学研究科修⼠課程修了、野村総合研究所(NRI)⼊社。ネット予約・販売システムの刷新・エンハンスの経験を経て、現在はシステム化構想・計画策定、PMO⽀援などコンサルティング業務に従事。専⾨はシステム化構想・計画策定と実⾏⽀援。