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 2020年4月から、大手通信事業者が5G(第5世代移動通信システム)を採用したモバイル通信サービスを提供し始めた。5G対応の携帯電話の販売も始まり、「これから5Gをどう捉え、どうビジネスに活用すればよいのか」と考えを巡らせる企業も増えているだろう。

 当初はエリア展開や対応端末が限られているが、5Gは今後10年にわたってモバイル通信の主役となることは間違いない、重要な存在だ。例えば近年、IoT(Internet of Things)やエッジコンピューティングなどを採用したサービスが増加している。これらはセンサーやデバイスから取得したデータを、データが発生した現場に近い場所で処理する技術を活用している。こうしたサービスのエッジ(現場に近い側)に5Gを採用し、AI(人工知能)を使ったデータ分析と組み合わせ、DX(Digital Transformation)を支える基盤の1つとなることが期待されている。

 特に産業分野では5Gを活用し、高画質な4K/8K動画などの大容量データを使った業務改革や、今までにないユーザー体験を提供する新サービスを生み出すことができるはずだ。そこで本記事では企業の情報システム部門や経営企画部門に向けて5Gの概要や、現段階で検討すべきポイントを紹介する。技術特性の把握から始め、それを踏まえて5G活用に向けての要点や、考えられる用途を解説しよう。

「高速」「低遅延」「同時多数接続」、3つの技術特性

 まずは、5G普及の現状を簡単に紹介する。米国を始め、世界的には8年ほど前から5G実用化への取り組みが進められてきた。日本では2014年に総務省を中心に産官学が連携して「第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)」が設立され、2015年ごろから実証実験を準備してきた。2017年からは、通信事業者を中心にさまざまな実験・検証が行われ、2020年4月の実用化に至っている。

 2020年9月の段階では、5Gが利用可能なエリアは限られている。一部の駅、空港、スタジアム、携帯ショップ店舗内など、限定された場所でのみ5Gが有効だ。今後、通信事業者がどのようにエリアを展開するかが5G普及の鍵といえる。

 続いて5Gの技術特性を見ていきたい。LTE(Long Term Evolution)の名前で知られる4G(第4世代移動通信システム)と比べ、5Gは「高速・大容量」「低遅延」「同時多接続」の3点で大幅に性能が向上する(下図)。

5Gの技術特性
5Gの技術特性
(図は筆者が作成。以下も同じ)
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