全5580文字
PR

 レガシーシステムをどんな手法で刷新すべきかは、自社システムの種類、ビジネスの状況、刷新の目的、リソース上の制約といったさまざまな条件次第で変わってくる。前回の記事で、レガシーシステム刷新の主な手法を5種類紹介した。今回は、5種類の中から自社に合った手法を選定する手順を詳しく解説する。

 レガシーシステムの刷新手法を決める際は、「〔1〕刷新対象の選定」「〔2〕刷新手法の選定」という大きく2つのステップを経る。順番に見ていこう(下図)。

レガシーシステム刷新手法選定の進め方
レガシーシステム刷新手法選定の進め方
[画像のクリックで拡大表示]

〔1〕刷新対象の選定

 まず企業の情報システムの中で、どのシステムをレガシーと捉えて刷新対象にすべきかを整理する。既に刷新対象のシステムが明確な場合は、この過程は省略して「〔2〕刷新手法の選定」に進んでかまわない。刷新システムがはっきり決まっていない場合は、以下の〔1-1〕~〔1-4〕を通して明確にしよう。

〔1-1〕全体目的の整理
 レガシーシステムを刷新する、全社的な目的を整理しておく。例えば「企業全体としてDX(Digital Transformation)を推進するためにレガシーシステムを刷新し、アジリティーを獲得したい」「企業全体で情報システムのコストを削減するため、保守費用を減らしたい」といった目的が考えられる。

〔1-2〕刷新候補の洗い出し
 〔1-1〕で設定した目的に合わせ、企業の情報システムの中で刷新候補となる対象を洗い出す。どこまでのシステムを検討スコープ(範囲)に入れるかによって、刷新候補として検討すべきシステムの数や種類は変わってくる。自社システム全体を対象にする場合もあれば、基幹系システムなど特定システムに対象を絞ることもある。

 候補を洗い出す際は、〔1-1〕で決めた全社的な目的に沿って検討する。例えばアジリティーを獲得したいなら、古くから稼働しているシステムや大規模なシステムが候補になる。保守費用を削減したいなら、年間の保守費用が高いシステムやホストコンピューター(メインフレーム)を使っているシステムが候補になるだろう。

 なお、ひとたび〔1-2〕で刷新の対象外とされたシステムは、この後の工程では「そもそもレガシーなシステムなのか」「対応が必要かどうか」の判定も行われない。本来は刷新対象とすべきシステムが〔1-2〕で漏れてしまわないよう、洗い出しは注意深く行う必要がある。

〔1-3〕レガシーアセスメントの実施
 刷新候補として洗い出されたシステムに対し、レガシーアセスメントを実施する。レガシーアセスメントは、システムのレガシー度を整理して「刷新すべきか/刷新は不要か」方針を固めるための手法である。

 レガシー度とは、「レガシーシステム特有の課題にどれだけ当てはまるか」「ビジネス部門(事業部門)からのシステムへの要求にどれだけ応えられているか」を数値化したものだ。レガシー度をチェックする際は、特に後者が重要である。言い換えると、システムに対してビジネス部門からの変更要求がほとんどない場合は、刷新をしても得られるメリットは小さい。

 刷新の必要性や優先度を見定めるためには、今のシステムがどれだけ老朽化・複雑化・ブラックボックス化しているかだけでなく、どれだけビジネス部門の要求に応えられているかを把握することが重要だ。「レガシーな状態」とは、「現状と要求との間にギャップがある状態」と捉えるべきである。そのため、レガシーアセスメントは情報システム部門だけでなく、ビジネス部門側からも実施する。双方から、今のシステムに対する満足度や要求への対応度を把握しておく必要がある。

 レガシーアセスメントでヒアリングすべき項目の例を下の①②に挙げた。

①システムの現状(情報システム部門向け)
・現行システムの状況(規模、複雑度、ドキュメント整備状況、有識者の有無など)
・保守状況(改修頻度、改修期間、コスト、End Of Life:EOL、サポートの有無など)

②システムへの要求事項(ビジネス部門向け)
・現行システムへの満足度(機能、コスト、対応スピードなど)
・システムへの期待(機能、コスト、スピードなどで改善してほしいポイント)

 情報システム部門とビジネス部門それぞれに、各項目に対して「そのシステムのレガシーらしさ」について点数を付けてもらう。例えば付ける点数は「1~5点」と決め、「ドキュメント整備が進んでいない場合は5点」といった具合に、システムがいわゆる「レガシーらしさ」を備える場合にスコアが高くなるようにヒアリング内容を用意しておく。

 記入者の主観によって評価が大きく変わる可能性もある。特定の項目について評価者ごとに点数が大きく異なる場合は、各記入者に点数の根拠をヒアリングしたうえで、必要に応じて点数の増減を行い、全体でバランスの取れたスコアとなるように注意する。