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 携帯大手が5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを開始した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に加え、当初はエリア展開や対応端末が限られていることから、人々の関心はそれほど高まっていない。しかし、5Gは今後10年にわたり、モバイル通信の主役となる存在であることに違いはなく、その重要性は変わらない。5Gはこれまでのモバイル通信技術と何が違うのか、徹底解説する。

 新しい移動通信システムでは、無線アクセスの技術に目が行きがちだが、コアネットワークも極めて重要だ。今回は、5Gのコアネットワークを中心に、5Gのアーキテクチャーの全体像に迫る。

5GCの本格導入は2021年度

 5Gのコアネットワークは「5GC」と呼ばれる。5GCの導入によりコアネットワークはどのように発展していくのだろうか。

 4GではLTEの基地局「eNB」をLTEのコアネットワーク「EPC」が束ねる構成になっている。

5Gのコアネットワークの導入シナリオ
5Gのコアネットワークの導入シナリオ
エリクソンの資料を基に本誌が作成
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 5Gの商用サービスでは当初、通信制御には既存LTEのEPCを使い、一部の基地局で5G対応を進める。この形態を「NSA」という。5Gの基地局を「gNB」、無線アクセスネットワークを「NR(New Radio)」と呼ぶ。NSAでは、データのやりとりには高速なgNBを使い、制御信号のやりとりにはeNB使う形になる。

 gNBの制御信号をやりとりするためのeNBは「アンカー」(いかりという意味)、使われる周波数帯を「アンカーバンド」という。アンカーバンドには既存LTEの低い周波数の電波を使うため、制御信号を確実にやりとりできるメリットがある。

 そして最終的には、コアネットワークに5GCを導入し、gNBを直接つないで制御する形になる。この形態は「SA」と呼ばれる。高速・大容量通信はNSAで導入できるが、低遅延・高信頼性や同時多数接続、さらには5Gのならではのネットワーク機能の実現には5GCの導入が必須となる。つまり5GとgNBの組み合わせによるSAにより「真の5G」が実現されるといえる。

 5GCの導入時期について、2020年4月30日時点でKDDIとソフトバンクは2021年度中を予定している。NTTドコモは検討中としている。