全3036文字
PR

ステップ3:背景をさらに詳しく調べる。対策を考える

 ステップ2のデータ分析によって把握したことについて、その要因をさらに深掘りして確認します。消費者へのインタビューを実施し、数字では把握しきれない消費者の “生の声”を聞きます。

 具体的には、複数人の消費者を集めてインタビューします。一般的には、FGI(Focus Group Interview)と呼ばれる方法です。次のような消費者カテゴリーを設定して、カテゴリーごとに複数人のインタビューを実施するとよいでしょう。

  1. 自社商品を購入し続けてくれている人(愛用者)
     (自社商品のどのような点を評価しているか教えてもらう)
  2. 自社商品を過去に購入していたが最近は購入をやめたユーザー(流出者)
     (なぜ自社商品の購入をやめてしまったのか、購入をやめた理由は競合商品へ移行してしまったからなのか。競合商品へ移行した理由は何か、どのような改善がされたら自社商品に戻ってくれるのかを教えてもらう)
  3. 競合商品を購入するが自社商品を購入してくれないユーザー(競合ユーザー)
     (競合商品のどのような点に魅力を感じているのかを教えてもらう)

 このように売り上げ不振の原因を探り、対応策を検討する際には、仮説思考の考え方に立って体系だったプロセスを用います。こうすることで、重要な要因を見逃すことなく対応策を検討できるようになります。

 売り上げ不振の原因を考える際には、やみくもに調査して結論を出すのではなく、ここで紹介した流れの全体を意識してみてください。

無料で役立つ情報ソース

 最後に、市場や競合に関する調査分析にお薦めの情報ソースをご紹介します。信頼性の高い情報ソースは高額で入手しにくいと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、入手が容易で役に立つものがあります。

 その情報ソースとは、上場企業が公開しているIR(投資家情報)資料です。IR資料は宝の山です。

 上場企業が自社のWebサイトで公開している情報は数値が並んだ決算情報のみだと思い込んでいる人もいますが、実際はそうではありません。数値以外のさまざまな情報が開示されています。

 特に初心者にお薦めなのは、スライド形式で公開されている補足資料や、アニュアルリポート(年次報告書)です。株主に対して分かりやすく現状を説明することを目的に、各社がグラフや写真を用いて作成しています。これらを読むことで、次のようなことが分かります。

  • 業界の現状
     業界に影響を及ぼす経済状況・該当業界の政策状況がどのように変化しているのか把握が可能です。業界の市場規模の推移、経済ニュース、規制の変化などを、IR資料から読み取ることができます。
  • 業界の将来
     業界が将来どのように変化すると見込んでいるのか、当該企業の見解を把握できます。特に、アニュアルリポートには経営者のコメントが書かれていることもあり、経営者がどのような将来を想定し、どのような経営戦略を立てているのか知ることができます。
  • 各社の戦略
     業界の現状や将来予想を踏まえ、当該企業がどのような対応を取ろうとしているかを把握できます。現在、どのような課題があり、そのためにどのような対策をしようとしているのかも分かります。売り上げに関する話題にとどまらず、経費の削減、物流の効率化、ブランディング、内部統制などさまざまな戦略を読み取れます。
  • 業界特有の重要指標(KPI)
     企業が重要視している指標を知ることができます。資料中のグラフで示されている数値はその企業が重視している数値です。例えば、Webサイトの累計ページビュー数、1店舗当たり売上高、外国人利用者の比率などです。
     その企業にとって株主へのアピール材料となる良い数字ばかりが記載されているケースも多いのですが、それでもKPIを把握するうえで参考になります。
  • 各社の数値水準
     当該上場企業が、各種指標についてどの程度の数値水準であるかを把握できます。例えば、都道府県別に店舗数と売上高を公開している企業の数値を用いて計算すれば、都道府県別1店舗当たりの年間売上高が把握できます。さらに、来店客数情報から客単価を導き出せます。
     また、各社が公開している月次の売上高の前年比推移を見れば、類似事業を展開している他社は、どの程度の売り上げ増減になっているかが分かり、自社と比較することもできます。

 このように、上場企業各社が公表しているIR情報の中の「補足資料」「アニュアルリポート」を見れば、難しい数字を理解しなくても貴重な情報を収集できるのです。無料で使える各社の生の現状を把握できる材料として、ぜひ使ってみてください。

小早川 鳳明(こばやかわ ほうめい)
企業再建プロフェッショナル(Pioedge/パイオエッジ 代表)
外資系コンサルティング会社を経て、現在は国内・海外企業の経営再建や経営改革、企業買収業務に従事。グローバル製造業、化学メーカー、全国小売りチェーン、高級アパレルブランドにて、事業戦略策定・実行、クロスボーダーM&A、PMI、社内体制構築、新規事業立ち上げなどのプロジェクト統括を担当する。累計10万人以上の従業員に関わる経営改革を実施。 外資系コンサルティング会社では、研修トレーナーとして現役コンサルタントに対してコンサルティングテクニックを解説する経験を有する。著書に、実際の企業決算数値を基に、MECE・ロジックツリー・フェルミ推定を使ったビジネス数字の見せ方を解説する『世界のトップコンサルが使う 秒速で人が動く数字活用術』、グローバル大企業メーカーのリアルな経営改革と企業買収の現場を描いた『ハーバード・MIT・海外トップMBA出身者が実践する 日本人が知らないプロリーダー論』(ともにPHP研究所)がある。