自信を持って開発した製品が、思うように売れない。原因を分析して改善策を立てなければならないという状況は、エンジニアにもよくあるでしょう。
筆者はコンサルタントとして、顧客企業のマーケティング戦略の検討を担うことがあります。実際に商品を購入してくれる可能性のある潜在顧客がどのように考えて商品の購入を決めるのか、逆にその商品の何が気に入らなかったために購入をしなかったのか、徹底的に調査します。問題点があれば、マーケティングやプロモーション活動の修正を促します。
今回は、商品検討をしてくれたものの実際には購入してくれない“取り逃し顧客”をどう防ぐべきなのか、取り逃しの理由を分析し改善アクションにつなげるための分析手法を説明していきます。
前回、消費者が実際に商品の購入に至るまでの検討ステップと、購入に至らずに流出してしまう過程を明らかにする「ファネル」という考え方を紹介しました。ファネルの考え方を用いれば、①消費者全体→②商品名を聞いたことがある→③店頭で商品を見かけたことがある→④店頭で実際に手に取って購入を検討したことがある→⑤実際に購入した、という各ステップのどこで、顧客の取り逃しが発生しているのかを明らかにできます。
しかしこれだけでは、取り逃しが発生しているステップは把握できても、原因を特定して改善案を考えて実行するには至りません。そこで今回は、「購入を検討してくれたけれども実際には購入してくれなかった理由を特定して、改善アクションにつなげる」方法を紹介します。言い方を変えると「購入に至る顧客はなぜ購入してくれるのか明らかにする」ことでもあります。
今回も、エンジニアとして製品の販売チームに加わっている新井さんの例をベースに考えてみましょう。
発売から3カ月が経過しましたが、当初の想定よりも売れ行きが良くありません。むしろ、競合β社の商品Bのほうが売れています。新井さんはチームリーダーから、何を改善すべきか分析するように命じられました。
商品Aが購入されない原因を、ファネルで分析
自社(α社)の商品Aと競合(β社)の商品Bのファネルを比較しながら考えていきます。商品Aは消費者が手に取って検討してくれるところまでは至っているものの、競合の商品Bに比べて実際の購入には至る割合は低くなっています。
商品A:
店頭で商品Aを購入をするかどうか手に取って検討した人が10人いたら、そのうちの2人しか商品を購入しない(店頭での実際購入率20%)
商品B:
店頭で商品Bを購入をするかどうか手に取って検討した人が10人いたら、そのうちの8人は商品を購入する(店頭での実際購入率80%)
ここから、商品Aが購入されない原因は「店頭での訴求の弱さ」にあると考えられます。