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 プロジェクト開始時の重要作業の1つがスケジュール作成です。まだ始まってもいないプロジェクトについて、先々の見通しを示すのは容易な作業ではありません。

 あるIT企業で、新しい業務プロセスの導入推進を担当することになった市原さん。プロジェクトの全体の流れを経営陣に説明するために資料を作っています。プロジェクトリーダーから「今後のスケジュールも説明資料に入れておいて」と頼まれました。

 スケジュールといってもプロジェクトは開始前で、市原さんは何を書けばよいかイメージがつかめません。しかもこのプロジェクトは1年を超える大型のもので、1年後の計画など想像がつきません。具体的にどこまで書くべきか悩んでしまいました。

 こんなときの対処法として、シンプルなスケジュール作成方法を紹介します。「何かしらのスケジュールを資料に入れて説明しなければいけない」ときにコンサルタントが使うフレームワークです。

3つのスケジュール作成方法

 コンサルタントがスケジュールを資料に入れて説明する際、大きく3つのパターンから最も適したフレームワークを選び出します。

スケジュール作成の3つのパターン
スケジュール作成の3つのパターン
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 詳細なスケジュールの情報を持っていないときや経営陣に説明をするときは、なるべくシンプルなものを選びます。全体像を示すことを重視し、大まかな流れ・所要期間を月単位で記載します。これが上図の「①方針レベル」に当たります。

 一方で、詳細な情報を持っていたり実務担当者に説明したりするのであれば、WBS(Work Breakdown Structure)など日次でタスクが把握できる詳細なものを選びます。上図では「③デイリーアクションレベル(WBS)」と記載しています。

 ①と③の間は「②マイルストーンレベル」です。進捗報告などの主要なマイルストーン(中間チェックポイント)を意識して、それまでに何を完了させるかを示しています。経営陣向けの重要会議や、プロジェクト途中の進捗報告などの際に②がよく選ばれます。

具体化できないなら「方針レベル」を使う

 今回は、「①方針レベル」について詳しく説明します。②と③については本連載で以前も紹介していますので、興味があればご覧ください。

 方針レベルは、スケジュールの説明資料を作らなくてはならないが「まだ具体的に決まっていない、将来のことすぎて内容が思いつかない」といった場合に活用できる方法です。コンサルタントはまず、先に作成する資料の枠組みを考え、それを見ながら書くべき中身を無理やりにでも絞り出します。一例が下図です。

「①方針レベル」のフレームワーク
「①方針レベル」のフレームワーク
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 「矢羽」と呼ばれる矢印のような形のブロックを横に並べることで、流れを表現しています。ここでは、プロセスの流れを書きます。例えば「企画→開発→設計→量産」や、「課題把握→改善策検討→改善実行」などです。その上で、各プロセスがいつごろ終わる見込みなのかを矢羽の右上に丸い図形で記載しています。この例の通り、「●月末」など大まかで構いません。

 重要なのは、このような枠組みを使うことで、最初は思いつかなかったスケジュールを考えながら埋めていけるということです。まず、「企画→開発→設計→量産」など大きなプロセスの流れを考えたら、プロセスごとに何をするのかを箇条書きで数個ずつ書き出します(矢羽の下)。箇条書きの内容も踏まえて、各プロセスをいつまでに終わらせるのかを考えます(矢羽右上の丸い図形)。

 このように枠組みを用意してそれを埋めていく意識を持つと、何を書くべきか思いつかなかったスケジュールも資料としてまとめられるようになるでしょう。