技術者としてキャリアを積んだうえでプロジェクトマネジャー(プロマネ)になる。是非はともかく、これは主要なキャリアパスの1つとなっている。
しかし技術者としては優秀だったのにダメなプロマネになってしまうケースが少なくない。技術者とプロマネでは求められるスキルや心構えなどが異なるからだ。
とりわけプロマネになりたてのITエンジニアには、技術者だったころにはなかった様々なプレッシャーや不満が覆い被さる。
最大のプレッシャーは、プロジェクトを成功させたり、部門の予算を達成したりする結果責任だろう。技術者であれば、ある意味、与えられた状況下で精いっぱい頑張ることが評価につながる。
しかしプロマネになると、頑張るのは当たり前。大手ITベンダーのプロマネAさんは、「状況そのものを変えることまで考えて行動し、最終的にどれだけの成果を得られたかが問われる。失敗すれば言い訳など通用せず責任を背負うことになるため、プレッシャーは大きい」と話す。
またプロマネとして、ユーザーと開発チーム、サブチーム間などの利害調整や、若手の人材育成など、高いコミュニケーション能力を求められる仕事が増えるため、気苦労が絶えなくなる。ある大手ネット会社シニアプロマネBさんは、「ブログに書き込む内容も含め、部下が社員として行うすべての行為に目を配らなければならないのは骨が折れる」と打ち明ける。
さらにプロマネになると、成果を上げて認められたいという気負いや、技術スキルの向上に充てる時間が減ることに対する不満も生まれがちだ。こうしたプレッシャーや不満は、技術者として優秀だったITエンジニアほど大きくなる。それゆえ、失敗するケースも増えるのだ。
大変な役割だがやり甲斐も大きい
ただしプロマネになることは、決して悪いことばかりでない。むしろ、上記のようなプレッシャーや不満を上回る「大きなやり甲斐が生まれた」と、取材したプロマネは口をそろえる。その1人、ITベンダーCさんは、「チームを率いることで、1人の技術者では決してできない大きな仕事を成し遂げられる。これが、プロマネとしてのやり甲斐につながっている」という。
では、いいプロマネになるにはどうしたらよいか。一つの方法は、新米プロマネが陥りやすい失敗パターンをつかみ、それを反面教師とすることだろう。
そこで本特集では、典型的な失敗パターンにはまった3人のケースと、取材で分かったダメなプロマネ像を紹介する。今回は「自分基準型」について取り上げる。