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 技術者としては優秀だった人が、プロジェクトマネジャー(プロマネ)になった途端に失敗してしまう――。こんな例は少なくない。

 そうしたダメなプロマネの典型パターン、「タコツボ視点型」「部下無関心型」のエピソードを紹介しよう。

「タコツボ視点型」プロマネ

技術者の発想から抜け出せず問題への対処あきらめ職務放棄

 「部長、もう私には無理です。プロマネの役職を解いてください」。大手ITベンダーのプロマネAさんはかつて担当したプロジェクトで、こう言って所属部署の上司に泣きを入れたことがある。

 きっかけは、そのプロジェクトにおいてオフショア開発の拠点としていた台湾で当時、あろうことかウイルスによる疫病が流行したことだった。打ち合わせのため渡航することが実質的に不可能になり、次の作業をいつ依頼できるようになるか分からない状態だった。そのままプロジェクトの人員を遊ばせておくと、1カ月ごとに4000万円のコストが発生するうえに納期遅れは必至になり、遅延分のコストで赤字に陥る危険性もはらんでいた。

いきなり十数億円の案件を任される

 そんなアクシデントが発生したプロジェクトが、実はAさんがプロマネとして最初に担当した案件だった。社内における一線級のアプリケーション技術者の証しである「アプリケーション・アーキテクト」という肩書を持ち、将来を嘱望され、いきなり十数億円規模のプロジェクトを任された。

 3日間悩んで「チャレンジしないと後悔する」と引き受けたプロマネ職だったが、「これで失敗すればアーキテクトになるまで積み上げた技術者としてのキャリアも水の泡になる」と、強烈なプレッシャーを感じたという。

 それまで純粋に技術者としてのキャリアを積んできたAさんには、プロマネに必要な知識もスキルもなかった。しかし技術者的なアプローチで知識をみるみる身に付けていった。まず全体像をつかむためPMBOK(Project Management Body of Knowledge)の勉強に励んだ。

 そのうえで実際にプロマネとして仕事を始めると、いつ誰を集めてどのような会議を開けばよいのかなど、分からないことを1つひとつ、上司や同僚に聞いて回った。その際、相手が薦める方法はなぜ優れているのかという理屈を明確にするため、「こうすべきではないか」という仮説を自分で3つ立て、それを基に助言を求めるといった工夫をした。

 こうして技術者としての優秀さの片りんを見せつつ着実にプロジェクトの序盤を乗り切っていったAさんだったが、プロマネとしての視点を持つという考え方の切り替えまではできていなかった。

 そのため「疫病の流行によるオフショア開発先への渡航禁止」という、解決策があるかどうかも分からないトラブルに見舞われると、たちまち思考停止に陥った。このまま手をこまぬいているとプロジェクトは遅延し、日ごと100万円以上のコストが泡と消える。