建設現場における死亡災害が減らない。ここ数年は年間300件前後で推移し、下げ止まっている。一品生産が多い、自然の影響を受けやすい、複数の事業者や下請けがかかわるなど、建設現場特有の難しさはある。だが、それを言い訳にしてはならない。今後は、人手不足を背景に安全面の知識や経験が不足した作業員が増えたり、ベテラン技術者の減少によってヒヤリハットへの対応が困難になったりと、建設現場のリスクは高まるからだ。いかに建設現場の安全を構築するか――。マンガを通して、その本質に迫る。

建設マンガ「事故よさらば」
目次
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この長雨、気にならないか?
見えないリスクを追え!
夜間に突如発生した、切り羽からの大量の湧水。帰路に就いていた主任の鈴田真頼は、所長の佐山高知からの連絡を受けて急きょ現場に戻る。そこには既に、佐山の姿が……。鈴田らを前に、作業員の安全確保、湧水の状況確認、用地外への流出確認、発注者への連絡など、矢継ぎ早に指示を繰り出す。かくて、長い夜が明けた。
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トンネル切り羽がヤバいぞ
見えないリスクを追え!
鈴田真頼(すずた まさより)、37歳。総合建設会社勤務の中堅技術者である。これまで大きな事故を経験してこなかった鈴田だが、現場主任として働くトンネル現場で突如トラブルに見舞われる。切り羽からの大量の湧水だ。鈴田を含め、慌て戸惑う職員。しかしその中に、的確かつ冷静な組織マネジメントを発揮する人物の姿…
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それくらい安いもんだ
ミスから生まれた「機械の安全化」
ベルトコンベヤーの泥による騒音に気付いた黒田清。近所からの苦情を気にし、泥を落とそうと、稼働中のベルコンにケレン棒を差し入れて巻き込まれそうになる。大事には至らなかったものの、ベテランの黒田がルールを無視し事故が起きそうになったことに、機電係の岡本洸太は衝撃を受ける。ベルコンそのものを安全に機能さ…
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苦情が来てからじゃ遅い……
ミスから生まれた「機械の安全化」
岡本洸太、26歳。総合建設会社に勤務し、トンネル現場で使う機械・設備の保守保全を担当する。ある日、掘削した岩石を運ぶベルトコンベヤーが緊急停止した。原因は、ベテラン作業員の不安全行動。今回はたまたま大事に至らなかったが、重篤災害になってもおかしくないミスだった。岡本は考えを巡らす。何とか、人のミス…
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死に場所はどこだ
あの時に言っといてよかった
事務所に戻る途中、ダンプからこぼれ落ちたズリに当たりそうになった清宮裕次郎。この1カ月、他にも危険な場面に何度か遭遇した。後輩の鈴森広太に、現場全体で「ヒヤリハット」を共有しているか尋ねるも、「あまりしていない」との返事。このままではいつか事故が起きると、危機感を抱いた清宮は、広太を食事に誘う。そ…
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さっき危うく死にかけた
あの時に言っといてよかった
清宮裕次郎、32歳。北海道にあるトンネル現場に赴任して1カ月。日々、原価管理に追われる所長、トンネルを熟知した職長、普段は定時で帰るがいざというときには人一倍馬力を出す後輩……。現場にも慣れ、ようやく仲間一人ひとりの性格もつかみかけてきた、そんなある日のことだった。