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 なぜ今カインズがデジタルに注力するのか。背景には国内ホームセンター市場の伸び悩みがある。

 日本DIY・ホームセンター協会の推計によると、2019年度のホームセンター市場は3兆9890億円と横ばい状態が10年以上続く。市場は成長していない一方で店舗数だけが毎年増えており「完全にオーバーストアの状態」(高家社長)だ。

ホームセンター市場の売上高と店舗数の推移(推計)
ホームセンター市場の売上高と店舗数の推移(推計)
(出所:日本DIY・ホームセンター協会)
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 同業間に加えEC事業者やディスカウントストア、ドラッグストアなどとの競争も激しさを増している。カインズの2020年2月期の売上高は前期比4.7%増の4410億円と7期連続の増収。ホームセンター市場全体の平均を上回る成長を続けているものの、従来通りの出店戦略では成長が難しくなってきている。

 カインズはデジタル技術を駆使して既存店の売上高と利益を伸ばす「高収益モデル」の確立を目指す。新規出店やM&A(合併・買収)で店舗を増やし成長する方針の競合他社と一線を画す考えだ。

店員向けアプリで業務効率化

 カインズがデジタル活用の第1弾として実用化したのが、店員向け業務アプリ「Find in CAINZ」だ。店員の業務効率化を目的に導入した。店員はアプリが入った専用のモバイル端末を携行し、店舗で扱う商品の場所や在庫情報の確認、棚割登録などができる。一部店舗での試験導入を経て2020年1月に全200店超に展開し、店員約2万人が利用している。

店員向けアプリ「Find in CAINZ」の概要
店員向けアプリ「Find in CAINZ」の概要
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 同アプリは店員が来店客から商品の陳列場所を聞かれた際に活躍する。カインズによると、店員が客から受ける質問の約8割が商品の陳列場所に関するものという。同社が運営する店舗の売り場面積は平均1万平方メートル。旗艦店の浦和美園店ともなると1万7000平方メートルと、サッカーコート2.4面ほどもある。扱う商品数は10万点に及び、店員ですら商品の陳列場所を把握しきれないのが実情だ。

 店員は客から商品の場所を聞かれた際、Find in CAINZを使って商品名やキーワードで目的の商品を検索し、陳列場所や在庫状況を調べられる。陳列場所はアプリの店内マップに赤いマークで表示され、目的の商品が棚の何段目の何列目に置いてあるかまで特定できる。「検索結果に商品画像も表示して、スムーズに案内できるようにしている」と、開発に携わったカインズの水野圭基デジタルイノベーション室ストアイノベーション推進プロジェクトリーダーは説明する。

 従来は商品の場所が分からない場合、他の店員にインカム無線機や内線で問い合わせる必要があり、案内に時間がかかっていた。アプリ導入によって、場所案内にかかる時間を客1人当たり約2分短縮できる見込みで、店員の業務全体の1割以上を効率化できるとみている。

 「自分の売り場でない商品の場所を聞かれた際もすぐに案内できる。商品を戻す作業で棚を見つけるのにも使えて大変助かっている」。カインズ新座店で働く女性店員はこう話す。モバイル端末には耐久性とバーコードの読み込み精度の高さを評価し米ゼブラ・テクノロジーズの「TC-52」を採用した。