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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で公共交通は大きな転換期を迎えている。利用者が減少する一方で、新型コロナ感染を恐れ「混雑を避けたい」というニーズが高まっている。東日本旅客鉄道(JR東日本)やヤフーが鉄道の利用者に混雑状況を配信して混雑を避けてもらう「密」回避サービスの導入を急ピッチで進めている。

 JR東日本は電車の車輪がついている台車と乗客がいる車体の間にある空気バネの圧力データを使い、混雑状況を推定する。ヤフーは利用者の経路検索履歴データからAI(人工知能)を使って混雑度傾向を算出する。利用を分散させ「密」を防ぎ、利用者に安心して公共交通を使ってもらう狙いだ。

6月の駅利用状況は緊急事態宣言下の2倍

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が2020年5月25日に全面解除されてから1カ月がたった。東京都も6月2日に発出した都民に警戒を呼びかける「東京アラート」を6月11日に解除した。

 企業がテレワークから出社勤務に戻したり、高校や中学などが再開したりした影響で、「公共交通の利用状況は新型コロナ感染拡大以前より減少しているものの、徐々に増加しつつある」と国土交通省の重田裕彦総合政策局モビリティサービス推進課長は話す。

駅の利用状況は緊急事態宣言解除後に増えている
駅の利用状況は緊急事態宣言解除後に増えている
出所:国土交通省
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 国土交通省が公式ホームページで公表している「テレワーク・時差出勤呼びかけ後のピーク時間帯の駅利用状況推移」のグラフでは、JR東日本や東京地下鉄(東京メトロ)などの大手鉄道会社の主なターミナル駅における平日のピーク時間帯の自動改札出場者数について、テレワークや時差出勤呼びかけ前を100としたときの減少率を示している。主なターミナル駅とは首都圏では東京駅や新宿駅、品川駅、池袋駅、横浜駅などだ。

 首都圏では緊急事態宣言下で駅利用状況が3割程度まで落ち込んだ時期もあったが、緊急事態宣言解除後の6月はその2倍に当たる6割程度まで戻っている。

 一方、世界全体では新型コロナ感染が確認された人数は6月23日時点で累計900万人、死者数は累計47万人を超えた。東京都でも新規感染者数が20人を超えた日が6月18日から23日の6日間連続で続くなど、予断を許さない状況だ。

 満員電車/バスは乗客が混雑した「密」の状態を作り、感染拡大のクラスターを発生させる恐れがある。「利用時間や路線を分散させて利用者数を平準化し、混雑を緩和する必要がある」と国土交通省の重田モビリティサービス推進課長は強調する。

 このような状況下で、JR東日本といった鉄道会社やヤフーといった経路検索サービスを提供する企業が、あるITサービスの提供や拡大を急ピッチで進めている。それが「通勤ラッシュ回避IT」である。

 通勤ラッシュ回避ITとは、公共交通機関の混雑状況を計測・配信して利用の分散を促すサービス。新型コロナ感染防止のために、利用者が通勤・通学時などに混雑を極力避けながら安心して移動できるよう支援する。

東日本旅客鉄道の中央線快速
東日本旅客鉄道の中央線快速
出所:東日本旅客鉄道
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 「各企業がテレワークや時差出勤を推奨しているため、混雑状況を配信するだけでも利用者が混雑時間帯を避けることができ利用時間の分散に一定の効果があると考えている」と国土交通省の重田モビリティサービス推進課長は話す。

 新型コロナ感染拡大以前は利用者がある時間帯は混雑していると分かっていても、例えば勤務時間が午前9時から午後5時までと決まっていた。そのため、やむを得ず混雑時間帯に電車やバスを利用している側面があったという。「現在は利用者が混雑を避ける行動をとれる状況にある」(国土交通省の重田モビリティサービス推進課長)。