全3784文字
PR

危機を克服し成長するには、ITの力を最大限に生かす必要がある。社員の働き方、自社の事業、そして情報システム部門。三位一体の改革が必要だ。コロナの第2波や第3波、そしてこれから企業を襲う未知の危機にも動じないDX像を探る。

 医療機器大手のテルモが情報システム開発の体制見直しを急いでいる。発注の単位を大手ITベンダーへの一括発注から機能単位の発注へ、費用の算定は工数ベースから成果ベースへ、それぞれ切り替える。要件を明確にしてから発注できるよう、情報システム部門の業務についても見直しと標準化を進めている。

 常駐型のシステム開発も原則として取りやめる方針だ。常駐していた発注先のITベンダーのエンジニアに、今後は在宅やリモートの作業を基本とするよう依頼する。開発生産性を見極めた上で、ITベンダーのエンジニア向けに確保していたオフィススペースについても適宜削減する方向で検討している。

 なぜ今、システム開発体制の見直しに乗り出したのか。「アフターコロナを見据えた施策の一環だ」。CIO(最高情報責任者)を務める竹内克也執行役員情報戦略部長は、こう説明する。

 テルモは新型コロナウイルス対策として、緊急事態宣言解除後の6月も多くの社員が在宅勤務を続けている。情報システム部門の社員も同様で、オンラインのやり取りを通じてシステム開発業務に当たっている。

 経済全体の悪化に伴い、同社の経営の先行きにも不透明感が漂う。「今後は情報システム部門のコスト削減が少なからず必要になるはず」。竹内CIOは短期的な引き締めを覚悟する。

ベンダー常駐を見直しへ

 そこで同社に常駐するITベンダーのエンジニアの働き方に焦点を当てた。オフィスに勤める同社の社員については「コロナ対策として実施した在宅勤務でも業務を継続できる」(竹内CIO)と分かった。ならばシステム開発を依頼しているITエンジニアとのやりとりもある程度オンラインに代替できるのではないか。

 もくろみは当たった。「Web会議のほうが資料を共有しやすい。必ずしも対面である必要はないと分かった」(同)。テルモはグローバルで基幹系システムの刷新プロジェクトを遂行中だ。プロジェクトに参画する社外のITエンジニアとのやりとりもWeb会議などで代替した結果、大きな影響は受けていないという。「少しの中断はあったものの、今後は計画通りに進められる」(竹内CIO)。

 竹内CIOは緊急避難的に実施した全社的なリモート勤務の経験を通じて、アフターコロナ時代の企業変革のヒントを得た。常駐をやめればITベンダーのエンジニアがいたビルのフロアの賃貸契約を解除できる。より柔軟な開発スタイルをとれるよう、対面とオンラインなど様々な手法を組み合わせてシステム開発を進めていく計画だ。

 ITベンダーへの発注の見直しは改革の始まりにすぎない。5G(第5世代移動通信システム)をはじめとする新しい技術を使った新規事業の創出などに、2~3年かけて取り組むという。

ウィズからアフターコロナへ

 世界で猛威を振るい、私たちの生活から社会、企業経営まで影響を及ぼした新型コロナウイルス。感染収束への取り組みが続く中、先進企業はニューノーマル(新常態)と呼ばれる世界に向けて動き出している。

 まずは当面の対策を手当てする必要がある。緊急避難的に始まった在宅勤務をより推進するためのツールの整備、それらの実践に必要なペーパーレス化や電子化などが典型例だ。コロナの存在を前提にしたウィズコロナとも呼ばれる社会を念頭に、当面の事業継続や危機からの脱出を図る。

アフターコロナの動き
アフターコロナの動き
[画像のクリックで拡大表示]