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AIがメンタルヘルス維持に役立つ

技術の変化にとどまりません。社会や産業にさまざまな影響が生まれるというお考えをお持ちです。

 AIの影響範囲は非常に幅広いものです。『次世代AI戦略2025』では、10の主要業種で起こり得る変化と、業種横断的に発生する10の注目動向を取り上げました。

 当社がかかわることも多い、ヘルスケアや介護の業種を例に、今後5年で起こりそうな未来を少し説明します。この領域では、デジタルやAIの活用によって現場の負荷を可視化して軽減し、人手不足の問題を解決する動きが広がります。

 介護の記録業務でいえば、間接業務をAIによる動画分析で代替するケースが増えるでしょう。上手にケアできているシーンを録画すれば、これを基に将来はAIがコーチングできるようになるかもしれません。被介護者が歩行している場面の動画から、歩行の状況をAIが評価するといったことも可能になるでしょう。介護者からの報告をAIが聞き取って記録するといった使い方も増えそうです。

注目の動向が10あると聞きました。いくつか聞かせてもらえますか。

 AIが未来の働き方を変えます。この1年強の間に多くの企業で在宅勤務が増え、従業員のメンタルヘルスをどうするかが問題になっています。この問題にAIが貢献します。

 当社は既にメンタルヘルスを支援するためのデジタルプロダクトを提供しています。日々の状況をアプリにインプットするんですが、いろんなコンテンツがあって、専門家とコミュニケーションを取ることもできます。

 AIは日々の入力状況を基にメンタルがどうなるかを可視化・予測できます。産業医や専門家とのビデオでのコミュニケーションの内容を解析することもできます。チャットボット的な利用も可能です。

 上司と部下のやり取りから、会話量のばらつきや、ビデオ経由で認識する笑顔の割合などもAIで分析できます。こういったものの活用も進んでいくでしょう。

家庭内など身近なところでもAIで変化が起こりそうですね。

 家庭の位置付けが変わります。新型コロナウイルス感染拡大でリモートワークやフードデリバリーが増えました。この流れがさらに進んで、家がオフィスやレストランを吸収するのではないかと考えています。

 リモートワークのための環境を家庭で整えるうえで、AIがさまざまな役割を果たすでしょう。スマートスピーカーがリモートワークに最適化される形で進化して、秘書あるいはメンタルヘルスの維持管理などで大きな役割を果たしそうです。自分が望んでいる情報やスキルを探してくれるのです。

 レストランの機能も同様です。現在でもオンラインの料理教室などは存在すると聞きますが、AIによるレシピの提案も行われています。調理ロボットが広がればもちろんAIが用いられているはずです。

 娯楽に関して、バーチャル旅行やバーチャルウインドーショッピングなどが広がるでしょう。データが収集できれば、AIによるレコメンドが可能になります。

 ほかにも自律型組織運営、組織的クリエーティビティーの創出、デジタル人材の採用、ソフトウエアエンジニアの組織マネジメントなど、企業の基盤というか横串の環境整備に関してAIの利用が進むでしょう。

AIはDXの中核技術

DXにAIは不可欠な技術だとも指摘していらっしゃいます。

 AIはDXの中核的技術といっていいでしょう。今、あらゆる企業にDXが必要になっています。既存のビジネスモデルを、デジタル、テクノロジーで変革しなければなりません。

 テクノロジーが進化によって、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などを用いて大量のデータの収集が可能になっています。こうした時代にDXに取り組まなければ競争力を失います。

 DXは企業にとっての一丁目一番地だと私はお話ししています。新型コロナウイルス感染症のような大きな変化が起こったときにも、人をアナログな接点から遠ざけることができるDXは大きな力を発揮します。実際にこの1年で想像以上にDXが進みました。

 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などで実現できるのは効率化ですが、AIは企業の競争力を高めます。自動化、効率化といったイメージが強いかもしれませんが、AIは人の意思決定をより高度化する力を持っているのです。