全2142文字
PR

 オンラインになって「売れる営業」が変わってきた――。テレワークが広がる中で、こんな話を複数の知人から聞かされた。これまでトップ級の成績を上げてきた百戦錬磨の営業担当者ほど、オンラインでの営業活動に苦戦している傾向があるという。

 「経験の浅い若手が、ベテランをしのぐケースも出てきている」という話も何度か耳にした。若手のほうがデジタルツールの使いこなしが上手だからかと思ったが、詳しく話を聞くとそんなに単純な話ではないようだ。対面の営業で効果的だったテクニックがオンラインでは通用しにくく、従来と異なる手法が求められているのだという。

 プレゼンや商談に苦手意識を持っていた人にとってみれば、これは1つのチャンスといえる。エンジニアをはじめ営業以外の職種でも、顧客や社内の他部門に商品説明をするシーンは多いだろう。対面では上手に話せなかった人も、オンラインでは“下克上”を起こせる可能性がある。

顧客の様子を“3次元”で把握できない

 オンライン商談は従来と何が違うのか。ここ数カ月、顧客にオンラインでしか会っていないという営業担当者Kさんに話を聞いた。営業経験が長く業界知識も豊富だが、オンラインではこれまでにない難しさを感じているという。

 まず商談の冒頭。対面なら、名刺交換のシーンが良いアイスブレイクになっていた。名刺に書かれている情報を基に話を振ったり質問をしたりして場が和んだ後に、本題に移れる。だがオンラインの場合は名刺交換ができない。自分はオンライン名刺を渡すが、「相手からもらえるケースは少ない」(Kさん)。

 さらに、オンライン会議では「効率良く話を進めなくてはならない、というプレッシャーをなんとなく感じる」とKさんは話す。アイスブレイクが無くいきなり本題に入るので、会話が堅くなりがちだと感じるという。

 商談中も、相手の反応をつかみにくい。対面していれば相手の表情が見えるし、資料に線を引いている、メモを書き込んでいるといった様子から「特にこのテーマに興味があるんだな」と分かった。だがオンラインではそれが把握できない。「セキュリティー上などの理由から、カメラをオンにしてくれない顧客もいる。自分が一方的に話すほかなく、相手の様子が全く分からなくて不安になる」(Kさん)。

 金融をはじめとした各業界で営業研修を手掛け、日経クロステック ラーニングで「オンライン商談を極める!『オンラインでの商品説明力』養成講座」の講師を務めるアネックスの天笠淳代表取締役も、同様の悩みを持つベテラン営業が増えていると話す。その理由を、「“雰囲気”で売ることができなくなったからだ」と分析する。

『オンライン商談』を極める! 「オンラインでの商品説明力」養成講座
『オンライン商談』を極める! 「オンラインでの商品説明力」養成講座

 経験豊富なベテラン営業は、「顧客の様子を“3次元”で把握する」(天笠氏)。表情だけでなく、声の微妙なトーンや体の動きから相手の反応を見るし、対面相手が複数ならばそのメンバー間の力関係も推測する。誰にどんな話をすればよいかを感覚的に察知し、その場に合った営業トークを繰り出す。オンライン会議ではそれが難しいため、苦戦しがちだ。

 逆に若手は経験が浅い分、顧客と対面しても読み取れる情報がベテランほど多くない。顧客の年齢や役職が自分よりも上だと、相手のオーラに気後れして思うように話せないこともある。

 だから若手は、会社や部署が用意した営業資料やシナリオを読み込んで準備する。そうした資料は、商品について論理的に、漏れなく説明できるように作られている。だから相手の反応が分かりにくくても、一定の成果を上げられるのだという。