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 大分市内に立地する大分県立芸術文化短期大学のキャンパスをリニューアルするプロジェクトである。2015年のプロポーザル(キャンパス整備基本設計)で、我々の提案が選ばれた。第1期の工事は19年2月に完了している。

正門側からシンボルロードの向こうに立つ音楽ホール棟(新築)を見る。右手前が図書館(同)(写真:小川重雄)
正門側からシンボルロードの向こうに立つ音楽ホール棟(新築)を見る。右手前が図書館(同)(写真:小川重雄)
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 主に1974年に整備された既存の校舎群は、緑豊かな環境の中、広場を中心に配置されている。校舎単体で見れば学科別にまとまりのある機能的なものだったのだが、ほとんど共有部を持たず、老朽化もしていた。学生たちの日常の学びの場が建物の外部に対しては閉じているので、敷地内を歩いても芸術活動の気配を感じさせないキャンパスだった。

 その中で、屋根下の空間を制作や展示の場として用いる「工房」が唯一、開かれた場として存在していた。プロポーザルでは、その工房を象徴的に扱って再編計画の起点とし、キャンパスの新たな軸「キャンパスモール」(第2期整備)を敷地の東西方向に通すことを提案した。

 もう1つ、正門から伸びる軸「シンボルロード」をキャンパスモールと平行に設定し、分散配置する交流広場やリノベーションする既存校舎、新築する校舎との間を2つの軸が結ぶ計画とした。これらの共用空間や回遊動線によって専攻の垣根を越える交流や刺激が生まれる余白を持つキャンパスへと進化させることが、提案の骨子だった。

既存校舎をキャンパスに開く

 キャンパスの再編に際し、既存の校舎群の半数以上を改修の対象としている。プロポーザル時には、改築予定だった既存校舎を可能な限りリノベーションによって活用することで、正門脇に、要項にはなかった図書館の新築を提案した。

図書館側から芸術デザイン棟(増築部)方向を見る(写真:小川重雄)
図書館側から芸術デザイン棟(増築部)方向を見る(写真:小川重雄)
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図書館の開口部側。内外を横断する木屋根や、勾配のある微地形に合わせた設えによって、ランドズケープに溶け込む居場所をつくった(写真:小川重雄)
図書館の開口部側。内外を横断する木屋根や、勾配のある微地形に合わせた設えによって、ランドズケープに溶け込む居場所をつくった(写真:小川重雄)
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基本設計完了時の模型。2つのキャンパス軸を設定し、新築する2棟のほか、木屋根のパビリオン(着彩部分)を点在させている。既存校舎の半数以上を改修の対象とする。❶ 事務棟、❷ 音楽棟、❸ ギャラリー、❹ 美術棟、❺ 工房、❻ 体育館、❼ 美術棟。❶~❻は第2期工事の改修予定部分、❼は第2期工事の増築予定部分
基本設計完了時の模型。2つのキャンパス軸を設定し、新築する2棟のほか、木屋根のパビリオン(着彩部分)を点在させている。既存校舎の半数以上を改修の対象とする。❶ 事務棟、❷ 音楽棟、❸ ギャラリー、❹ 美術棟、❺ 工房、❻ 体育館、❼ 美術棟。❶~❻は第2期工事の改修予定部分、❼は第2期工事の増築予定部分
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 リノベーションの対象となる校舎でも、学生たちの居場所や動線を新たな共有部として確保した。その際に校舎の一部の半外部化を行い、新たな交流を促す場づくりを心がけた。これらの共有部へも講義室や実習室の活動がにじみ出し、閉じていた校舎が改めてキャンパスネットワークに結び付くような計画としている。

 キャンパス再編を進めるアプローチとして、新たに提案した2つの軸と校舎群の間を縫うように交流広場を点在させている。キャンパス軸の両端には、木組みを現した大きな屋根下空間を持つ図書館と音楽ホール棟を新築。また、それらを補完する木屋根のパビリオンを各所に配置している。

芸術デザイン棟(改修+増築)

既存校舎のリノベーションよって半外部化した共用空間を生み出した(写真:小川重雄)
既存校舎のリノベーションよって半外部化した共用空間を生み出した(写真:小川重雄)
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芸術デザイン棟増築棟のピロティ(写真:小川重雄)
芸術デザイン棟増築棟のピロティ(写真:小川重雄)
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同増築棟ロッカールーム前の待ち合いスペース(写真:小川重雄)
同増築棟ロッカールーム前の待ち合いスペース(写真:小川重雄)
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