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 兵庫県西宮市に本部を置く武庫川女子大学は、10学部17学科、学生数8000人を超える日本一の規模の女子総合大学である。創立80周年を迎えた2019年に、創立100周年となる2039年を視野に収めて大学を飛躍させるプロジェクト「MUKOJO ACTION 2019-2039」をスタートさせた。その一環である本計画は経営学部新設に伴う新校舎建設事業であると同時に、20年後の100周年に向けた教育改革のベンチマークとして位置づけられている。

 女性の社会進出に伴い、女子大学に求められる役割は大きく変わりつつある。武庫川女子大学は、個々のライフステージの変化に柔軟に対応し、社会で活躍できる女性を育てることを教育改革の目標に掲げる。そうした理念に基づき、本計画は「shared studios」というコンセプトを掲げている。日本最大の女子総合大学のネットワークを生かし、先輩や友人との交流を通して多様な価値観を育む。そのための、新しい学び舎の在り方を模索した。

既存の校舎群の景観に合わせながら、新たな学びの場であることも表現したファサード。屋根はアスファルト防水、屋根保護防水密着断熱防水工法、外壁は陶磁器質タイル(I類)60mm×108mm 特注色、外まわり建具はアルミカーテンウオール 着色陽極酸化塗装複合被膜(写真:古川泰造)
既存の校舎群の景観に合わせながら、新たな学びの場であることも表現したファサード。屋根はアスファルト防水、屋根保護防水密着断熱防水工法、外壁は陶磁器質タイル(I類)60mm×108mm 特注色、外まわり建具はアルミカーテンウオール 着色陽極酸化塗装複合被膜(写真:古川泰造)
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全館を貫く吹き抜けまわり(写真:ナカサ アンド パートナーズ)
全館を貫く吹き抜けまわり(写真:ナカサ アンド パートナーズ)
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「知」をシェアする学び舎

 shared studiosというコンセプトの下、日常的な空間の共有(share)により、他者の「知」を自分の「知」として共有(share)できる新しい学び舎を目指した。

 まず、館内で展開される多様な学習シーンが、視覚だけではなく五感を通じてダイレクトに学生を刺激するよう、壁などの物理的な障壁を極力取り除き、立体的なワンルームの空間としている。個々の興味に従って授業を選択するのを容易にし、主体的な学びを促す狙いがある。居場所の選択肢が増えるので、先輩や友人と交流するきっかけが生まれやすくなる効果もある。

4階のラボフロア。間仕切りのないゼミスペースやラウンジを吹き抜けの四周に配置している。照明、空調設備はアルミエキスパンドメタルの天井裏に収め、吹き抜け側にオープンになった空間全体の連続感を強調している(写真:古川泰造)
4階のラボフロア。間仕切りのないゼミスペースやラウンジを吹き抜けの四周に配置している。照明、空調設備はアルミエキスパンドメタルの天井裏に収め、吹き抜け側にオープンになった空間全体の連続感を強調している(写真:古川泰造)
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 さらに、演習と研究という目的の異なる学習空間が交互に積層し、吹き抜けを介して緩やかにつながる構成としている。学習に適したプライバシーを確保しながら、相互の活動を感じ取ることができる校舎となっている。

 こうした中高層立体キャンパスでは、垂直移動のストレスと上下階のコミュニケーションの断絶が課題になる。そこで、館内に学生のにぎわいを循環させるような空間構成を考慮している。

 浮遊するエントランス、テラスと一体化したブリッジ、アクティビティーが伝わるロングエスカレーター、自然光の降り注ぐエレベーターなど日常動線の中に学生の気分を高揚させる多様な仕掛けを盛り込んだ。これらによって「館内移動」は、「館内散策」という日々の楽しみへと変換される。

物理的な障壁を極力取り除き、学生が講義にアクセスしやすくなる立体的なワンルーム型の校舎としている(写真:古川泰造)
物理的な障壁を極力取り除き、学生が講義にアクセスしやすくなる立体的なワンルーム型の校舎としている(写真:古川泰造)
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演習用(コラボ)のフロアと研究用(ラボ)のフロアを交互に積層し、前者を2層間直通のエスカレーターで結んでいる(図:竹中工務店)
演習用(コラボ)のフロアと研究用(ラボ)のフロアを交互に積層し、前者を2層間直通のエスカレーターで結んでいる(図:竹中工務店)
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