三菱地所の常盤橋タワーと三井不動産の東京ミッドタウン八重洲──。大手デベロッパー2社が進めるビッグプロジェクトの「キラーコンテンツ」から、アフターコロナのオフィス像が浮かび上がる。
「アフターコロナのキーワードは『出社したくなるオフィス』だ」。オフィス市場のシンクタンク、オフィスビル総合研究所(東京・中央)の今関豊和代表は最近のトレンドをこう語る。「新型コロナウイルス禍で出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが浸透し、社員は働く場所を主体的に選べるようになった。逆に言えば、出社するには『理由』が必要になった」(今関代表)
こうした状況下、オフィスビルに入居するテナント企業は社員が出社する動機付けを求めている。都心の大規模オフィスを手掛ける大手デベロッパーは借り手企業のニーズをいち早くつかみ、共用空間の付加価値を高めている。その背景には、「出社したくなる仕掛け」を付加価値として提供できなければ、激化するテナント獲得競争を勝ち抜けないという危機意識も垣間見える。
不動産関係者は口をそろえてこう言う。「レンタブル比の最大化を優先する旧来的なオフィスづくりは終わった。共用空間の付加価値によって、他のオフィスとの差別化をどう図るのかを考える必要がある」(大手デベロッパーのオフィス企画担当者)
常盤橋タワーと東京ミッドタウン八重洲をひもとく
それでは出社したくなるオフィス、他のオフィスに差をつける付加価値とは一体どのようなものだろうか。まずは2021年6月に東京駅前に竣工した常盤橋タワーから見ていこう。
常盤橋タワーでは、2つのフロアをビルのテナント向けの共用空間として整備した。3階の飲食エリア「My Shokudo」と8階のオフィスサポートエリアだ。特にMy Shokudoは常盤橋タワーの目玉となっている。
My Shokudoは、Dining、Sakaba、Cafe、Hall&Kitchenの4つのゾーンに分かれている。面積は約1490m2で座席数は約500。ビルの就業者は日中、社員食堂として利用できる。現在は1日1000食程度を提供しているという。