4月に中国の各都市で都市封鎖が解除され、安全性を担保しながら従業員をどうやってオフィスに戻すかに企業は頭を悩ませた。この課題を黒子のように支援した会社がある。世界最大級の不動産サービス会社である米クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)だ。
同社は中国の不動産会社、万科企業(チャイナ・ヴァンカ)と合弁で、ファシリティーマネジメントサービスを展開する。合弁企業である万科サービス クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド合弁会社は、中国最大のサービスプロバイダーである。
都市封鎖解除後、万科サービスには顧客企業からさばき切れないほどの支援要請があった。困っていた内容はどの企業も同じだった。「従業員の安全を担保しなければならないが、すぐにオフィスのレイアウトは変えられない。低コストで迅速にできる対策はないか」──。まさに、「ウィズコロナ」のオフィスの形を、どの企業も模索していた。
万科サービスがオフィス復帰を支援した企業数は、なんと1万社。従業員数で100万人に上る。
1万社の復帰計画で見えた普遍的なルール
従業員をオフィスに復帰させるとはいっても、抱えている課題は個社ごとに異なっていた。IT企業はスムーズに在宅勤務へ移行できていたが、試作機や評価設備が生産拠点にしかない製造業などでは、出社しなければ業務が回らないケースもあった。
まず、オフィスでしか業務ができない業種をリストアップし、都市封鎖解除後にどの程度の出社率が現実的なのかを試算。その上で、段階的に人をオフィスに戻すためのロードマップを引いた。
人と人との間隔を2m空けるのか、1mとするのか。通常の人の動線はどうなっているのか。必要な出社率などから逆算してレイアウトを固め、同時に、通路を一方通行にして感染リスクを減らすなどのルールを決めていった。
中国での1万社のオフィス復帰計画を作成し実行するなかで、普遍的なウィズコロナのオフィスの姿が見えてきた。それをC&Wは「6フィート・オフィス」と名付け、まず自社のオフィスで採用し始めている。6フィートは約1.82mで、言うまでもなくソーシャルディスタンスの考え方をオフィスに取り入れることを意味している。
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