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景況感が悪化し、テレワークの浸透でオフィス需要が落ち込みかねない状況を専門家はどう見ているのか。オフィス仲介大手である三幸エステートでチーフアナリストを務める今関豊和氏に、今後のオフィス市況を聞いた。(聞き手は島津 翔=日経クロステック)

三幸エステートが2020年7月9日に発表した「オフィスマーケット」の東京都心5区大規模ビル版を見ると、「潜在空室率」(即入居可能物件だけでなく、テナント退去前でも募集が公開されていれば「空室」とみなした空室率)が5月、6月と上昇しています。どうご覧になっていますか。

今関 豊和 三幸エステート チーフアナリスト
今関 豊和 三幸エステート チーフアナリスト
1987年東急建設入社。開発営業部門に在籍するとともに、米国デンバー大学でMBA取得。99年ジョーンズ ラング ラサール(JLL)東京オフィスのリサーチ部門ヘッド、2004年ラサール インベストメント マネジメントのシカゴ本社と東京オフィスで日本向け私募ファンドに対する投資戦略立案およびグローバルリサーチ業務を担当。06年米国ジョージア州立大学経営大学院博士課程入学。博士号(Ph.D.)取得。13年から三幸エステートのグループ会社であるオフィスビル総合研究所の代表取締役を兼務する(写真:三幸エステート)
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 潜在空室率は今年1月の2.08%から6月は3.13%に1.05ポイント上昇しています。この数字は「かつてなかった」というほどのものではありませんが、リーマン・ショックなどの大きなショックがないと起こらないような幅だと考えていただいていいと思います。

三幸エステートが発表した東京都心5区大規模ビルの空室率
三幸エステートが発表した東京都心5区大規模ビルの空室率
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 少なくともオフィスマーケットは、2012年以降ずっと空室率が下がる局面が続いてきました。そういう意味では、かなり久しぶりだと言えます。

どのようなメカニズムで短期間に潜在空室率が上がっているのでしょうか。

 潜在空室率は、解約予告を出したけれどもまだ退去していない物件を含みます。

 今年は新築のオフィスビルが多く、その新しいビルに移転する大型テナントが退去の予告を出したことが大きな背景になっています。

 こうした動きは今までもあった話です。ただ、ちょっとこれまでと様子が違うのは、以下のような動きがあるからです。

 通常、テナントが移転して空きが出たオフィスのオーナーは、まず優先的にその上下に入っている別のテナントに対して、増床するかどうかを聞きます。今まではそのテナントが「面積を広げたいと思っていたから借りる」というケースが非常に多かった。「増床を考えるので外部に募集を出さないでください」という申し出があれば、潜在空室としてマーケットには出てこないわけです。つまり、空室率が同ビル内のテナントによって吸収されていたんですね。

 ところが今はそうしたニーズが小さい。だから吸収されずに潜在空室率が上がっているのです。需要が今までに比べて弱くなっている1つの現れだろうと見ています。