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 2020年5月に緊急事態宣言が解除され、すぐに多くのベンチャー企業はオフィスの縮小に動き出した。日経クロステックは、オフィスに関する変革の様子を書籍「さよならオフィス」としてまとめ、10月9日に発売する。いち早くオーナーに解約通知を出した企業は、今どんな働き方をしているのか。それを「さよならオフィス、その後」としてまとめていく。前編は、「必要な面積を現状の3分の1」と試算したClipLine(クリップライン、東京都品川区)のケースを紹介しよう。東京・田町から同五反田に早くも移転した同社は、この経験を基に新しいサービスを生んでいた。

 東京・五反田──。動画によるマネジメント支援サービスを手掛けるClipLineは2020年8月31日、この地のTOCビルに移転した。東京・田町にあった旧オフィスの床面積は184坪。それを新オフィスでは78坪に縮小した。月額賃料は500万円から100万円へ。諸費用を除くと年間5000万円のコストカットになるという。同社は今、どんな働き方をしているのか。現地に向かった。

 まずは改めて、同社のオフィス縮小の流れを振り返ろう。

 移転の検討を始めたのは、緊急事態宣言が発令されてすぐの4月上旬。田町の本社オフィスには約80人が働き、原則として1人に1席の固定デスクを与えていた。賃料月額500万円はそれまでのオフィスの2.5倍だったが、採用に効果があると考えて移転していた。しかし、同社は誰も来ないオフィスにその値打ちはないと踏んだ。

ClipLineの旧オフィス。東京・田町に構えていた(写真:ClipLine)
ClipLineの旧オフィス。東京・田町に構えていた(写真:ClipLine)
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 TOCビル7階の奥に、ひっそりと構えたオフィスは、ベンチャーの居抜き物件だ。扉を開けると、右手には全席フリーアドレスの執務スペース。30席ほどがこのスペースに並ぶ。給与計算などを担当する管理部門の優先席を壁側に、映像編集部門の優先席をスペックの高いデスクトップPCが並ぶゾーンに配置したが、基本的には自由にどの席でも使うことができる。

 左手には、打ち合わせテーブルや半個室のミーティングブースが並ぶ「ラウンジ」と名付けたスペース。記者が訪れた際には、打ち合わせテーブルに吸音素材のブースが設置されており、ビデオ会議をする社員の姿があった。このスペースの使い方の検証をしている最中だ。

 他に会議室が2部屋、機密情報を扱う個室が1部屋。これで全てだ。社長も取締役も固定机や個室を持たないシンプルなオフィスになった。

 移転先の物件が見つかった後で、オフィス改革プロジェクトを担当した遠藤倫生取締役は、同社の5部門それぞれに、新オフィスでの出社のルールを自主的に決めさせた。数週間後にヒアリングしたところ、どの部門も「週に1度は部員が集まるミーティングをしたい。ただし、出社は強制せずにオンライン参加でも構わない」との結論だった。

 「5部門それぞれが週1でミーティングなら、曜日をずらせば固定席はほとんど要らないな」。遠藤取締役はそう考え、フリーアドレスを前提としてオフィスのレイアウトを決めていった。