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 「もう東京にいる必要はないですよね? こういう環境で仕事をしたほうが、職住近接で、満員電車に乗らなくてもいい。当然、生産性も上がるはずです」

 パソナグループの渡辺尚副社長執行役員は、オンラインによるビデオ取材でこう語った。画面越しに映る背景にはビーチと海が広がる。「まさかオフィスに日焼け止めを塗ってから出社する日が来るとは思いませんでしたよ」

 人材派遣大手の同社は2020年9月から、段階的に本社機能の一部を兵庫県の淡路島に移している。同社が方針を発表すると、インターネット上で大きな反響を呼んだ。Twitterでは「淡路島」が一時トレンド入り。多数が「思い切った計画だ」と驚きの声を上げた。

 対象となるのは、経営企画や総務、人事、経理、IT部門の一部など顧客との直接的な接点が少ない管理系の部門。9月1日付で約80人が既に淡路島での勤務を開始。1200人程度が淡路島勤務となる見込みだ。24年までに段階的に従業員を移していく。意向などをヒアリングしながら総合的に異動者を決める。営業拠点は引き続き東京を含む全国に配置する。

 すでに使用しているオフィスに加えて、新たに淡路市内の数カ所に分散させて拠点を構える予定だ。一部は自社で土地を保有し、オフィスビルを新設する。本社機能の移転に伴って、東京オフィスは「段階的に縮小していく」(渡辺氏)。

 この移転には2つの背景がある。

 1つは多くの企業がそうであるように、新型コロナによってテレワークが浸透し、主要拠点と離れていても業務が滞りなく進められると分かったこと。同社は新型コロナ対策として、約4割がテレワークで働く。引き続きこれからもテレワークを併用しながらの働き方を続ける。

 もう1つはBCP(事業継続計画)の観点だ。「20年も豪雨や台風などの災害が相次いでいる。東日本の主要拠点を東京に置き、淡路島を西日本の主要拠点とし、管理系の部門を分散する」(渡辺氏)

 テレワークの浸透とBCPが理由ならば、引き続き都心にオフィスを構えて出社を分散させることでも対応できるはずだ。なぜ淡路島への移転なのか。