全2519文字
PR

 「自分の文章が正しく伝わっているのか心配」。ビジネスパーソン向け文章講座で講師を務めている筆者は、こんなご相談を多く受けます。自分で不安を感じている人もいれば、上司に「あなたの文章は分かりにくい」と言われて講座に参加する人もいます。

 社内であれば、文章の間違いや分かりにくさを注意してくれる人もいるでしょう。しかし取引先など社外の人が指摘してくれるケースはほとんどありません。

 正しく伝わらない文章の場合、読み手から何度も質問されたり、書き手の意図と異なる返答を受けたりします。しばらく時間がたってから読み手に正しく情報が伝わっていなかったことが判明し、大規模な手戻りが発生することもあります。質問に答えたり、手戻りに対処したりする時間や手間は目に見えないコストになります。

 さらにソフトウエア開発の現場では、1カ所を修正するだけでなく、関連する資料すべてに影響が及ぶという状態に陥る場合があります。外部設計書に1カ所欠陥があり、それを基に内部設計書が作られた場合、修正の作業量が外部設計書だけの場合と比べて12倍に膨らむという調査結果もあります。つまり難のある文章は開発コストの増加やスケジュールの遅延につながるのです。

文章が分かりにくい人のメールは後回し

 モチベーションにも影響があります。例えばソフトウエアの検証担当者が書く不具合発生の報告書が分かりにくかったとします。いつも分かりにくい報告書がメールで送られてくると、開発者は「またあの人の文章か」と気が重くなり、後回しにしがちになります。

 逆にいつも分かりやすい報告書を送ってくる人であれば「この人のメールには早く手をつけよう」と思うものです。分かりやすい文章を書けば、自分の仕事がそれだけ速く進むというわけです。

 「文章なんて、何となく伝わればいいのではないか」と考えている人は少なからずいます。しかし分かりにくい文章は、プロジェクトのトラブルや遅延につながるのです。文章を書き終えたら、相手の立場に立って「相手が素早く正しく理解し、的確な行動を取れるかどうか」を意識しながら推敲(すいこう)してみましょう。

 入社や異動で新しいメンバーを迎える春は、自分の文章を見直すのに良い季節です。業務フローや作業方法などを、新たに加わった人たちに説明しなくてはならないからです。これまで口頭で伝えてきたことも、テレワークが進んだ今は文章で伝えるケースが増えているでしょう。予備知識のない人に理解できる文章かどうかを意識しながら書いてみるとよいでしょう。