全2888文字

 「メンバーの出身母体を見ると、一部の学識者を除いて日本銀行、金融庁、銀行、大手ITベンダーがほとんど。ガバナンスに関する指摘への答えになっていない」。ある大手銀行OBは、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が2020年5月に設置した「次世代資金決済システムに関する検討タスクフォース」の顔ぶれを見て、こう漏らす。

 公正取引委員会が2020年4月21日に公表した報告書によって動揺しているのは、NTTデータの決済インフラ「CAFIS」だけではない。日本の決済システムにおけるもう一つの双璧である「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」も在り方を問われている。全銀システムは日本国内で預金を取り扱う金融機関のほぼ全てを網羅する銀行間決済ネットワークで、全銀ネットが運営している。

 公取委は報告書のなかで、銀行間手数料の見直しや全銀ネットのガバナンス強化などについて指摘した。これを受けて全銀ネットは、早々に手を打った。冒頭のタスクフォースを新設し、銀行以外に対する全銀システムの開放や少額送金への対応などについて議論を開始したのだ。

 公取委が指摘するCAFISや全銀システムの課題は、硬直的な料金設定や商慣習である。

 例えばCAFISの定価は2007年以降、見直しされてこなかった。NTTデータの栗原正憲カード&ペイメント事業部事業部長は、「標準料金を変えなかったのは事実。ただし個別の調整はしてきたし、公取委の報告書にもそうした記載はある」と説明する。一方で、「NTTデータからは『全ての銀行が同一条件となっており、費用の引き下げ交渉には応じない方針』と言われている」との声が銀行からは漏れる。

 全銀システムに至っては40年以上、銀行間手数料が変わっていない。個人や法人が銀行口座振込をする場合、振込依頼を受けた仕向銀行が、振込先である被仕向銀行に対して銀行間手数料を支払う。全ての銀行が、銀行間手数料を「3万円未満の場合で117円、3万円以上の場合は162円」に設定しているが、この料金水準は「実際に発生する事務コストを大幅に上回っている」(公取委の報告書)という。公取委の報告書によれば、ある銀行は「銀行間手数料の水準に関して他行と交渉しなかった理由やその水準の妥当性について、議論や検討をしたことはない」と証言している。「銀行間手数料については、何故発生しているのかよく分からない。少なくとも被仕向銀行として振込を受ける際にコストが100円も生じることはない」という銀行もあった。

銀行間手数料の概要
銀行間手数料の概要
出所:公正取引委員会
[画像のクリックで拡大表示]

 銀行間手数料は、顧客向けの振込手数料に転嫁されている。キャッシュレス決済事業者が加盟店に売上金を振り込むタイミングを数日に1回といった具合に制限しているのも、振込手数料を抑えるのが目的。銀行間手数料が低減されれば、こうした状況も変わり得る。