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 厚生労働省は2020年7月3日、新型コロナウイルス対策向け接触確認アプリ「COCOA(COVID-19 Contact-Confirming Application)」について、陽性者からの通知を受けられる機能を有効にした。接触確認アプリの本格運用が始まった格好だ。

 安倍晋三首相は5月下旬に「アプリが人口の6割近くに普及できれば大きな効果が期待できる」とする英オックスフォード大学の研究結果に言及したが、現状でアプリは広く普及しているとは言えない。6月19日にリリースして以来、7月6日午後5時までの総ダウンロード数は約582万件と、国内スマートフォン利用者数の1割未満にとどまる。

 「6割普及は正直かなり厳しい」――6月8日に日経クロステックが開催したウェビナーシリーズ「コロナとAI」で世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターに所属する藤田卓仙・慶応義塾大学医学部特任講師はこう述べた。

 藤田特任講師は内閣官房の接触確認アプリに関する有識者検討会議の委員を務める。この有識者検討会議は5月9日に第1回会合、17日に第2回会合を開催してCOCOAの基本的な仕様などの検討を重ね、26日に仕様書などを公開した。

 同氏はウェビナーで国内外の接触確認アプリの特徴を紹介するとともに、今回のような感染症対策をはじめとする公益目的のデータ活用の在り方を提言した。

プライバシーに配慮し、最低限の情報のみ取得

 新型コロナウイルスの感染者とその接触者を追跡する同様のアプリは世界中で開発・導入が進んでいる。取得するデータの種類が多いほど、実効的な対策を打ちやすくなる一方、プライバシーへの懸念から普及率が高まらないジレンマがある。

 各国のアプリの利用目的は「接触度に応じた施設や地域への立ち入り制限・感染者隔離のためのツール」、「公衆衛生当局による濃厚接触者の把握のための補完ツール」、「通知を受けた接触者の行動変容による感染拡大防止の、個人向けのツール」の3パターンに分類できる。日本のCOCOAはこのうち3番目の目的のみで「最も個人のプライバシーに配慮した形をとっている」(藤田特任講師)。

各国における接触確認アプリの利用目的
各国における接触確認アプリの利用目的
(出所:接触確認アプリに関する有識者検討会合)
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 COCOAは新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性があるユーザーにそのことを通知するアプリだ。ユーザーに自身の行動変容を促すこと、濃厚接触の可能性を通知したユーザーに国の「新型コロナウイルス感染者等把握・管理支援システム」への登録を促すことの2点を目的としている。スマホのBluetoothを利用し、ユーザー同士の接触を検知し、記録する。ユーザーは自身が感染者との接触確認の通知を受け、自ら外出自粛など行動変容を意識することで感染拡大防止に寄与することが期待されている。

各国における接触確認アプリの比較
各国における接触確認アプリの比較
(出所:接触確認アプリに関する有識者検討会合)
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 同アプリはプライバシーに配慮し、最低限の情報しか取得しない。位置情報を取得しないほか「基本的に個人を特定する情報を利用しないのが特徴」(藤田特任講師)。また、ユーザーの接触者のデータはそれぞれのユーザーの端末で管理し、中央で集約しない。

 COCOAはAndroid用とiOS用があり、それぞれGoogle Play、App Storeからユーザーがダウンロードして利用する。「個人が任意でダウンロードする形だと、全国民の6割が利用するというのは正直かなり厳しい」と藤田氏は言う。一方で、一部の組織内や地域内など局所的に普及率を高める手法は、利用のインセンティブを付与するなどの仕組みを作ればあり得るとした。

公益のためのデータ活用をどう進めるか

 ウェビナー後半のディスカッションでは、感染症の流行予防という公益目的のために、個人情報をどこまで収集して活用できるかが議論になった。接触確認アプリのケースでは、各国ごとに対応が異なる中、日本はプライバシーに配慮した結果、ほとんど個人情報を取得・活用しない形となった。