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 新型コロナウイルスによる肺炎を、コンピューター断層撮影装置(CT)画像から人工知能(AI)が検出する――。エムスリーが中国アリババ集団と連携して開発した画像診断支援AIについて、同社は2020年6月下旬に製造販売承認を厚生労働省から取得した。プロジェクト開始から約3カ月、申請から1カ月弱での承認は異例のスピードだった。

 AI開発から承認まで、どのようにして短期間でこぎつけたのか。プロジェクトを主導したエムスリーの杉原賢一AIラボ所長は、日経クロステックが2020年6月17日に開催したウェビナーシリーズ「コロナとAI」に登壇し、視聴者からの公開インタビューに答えた。ウェビナーでは医師ら医療関係者からの質問も多く、関心の高さがうかがえた。

中国で高精度のAI開発がスピーディーに進む

 承認を取得したAIシステムは、CT画像から新型コロナによる肺炎の可能性を評価し、肺炎が疑われる箇所に印をつけて表示することで、医師の診断を支援する。

製造販売承認を取得した、新型コロナ肺炎向け画像診断支援AIシステムの画面
製造販売承認を取得した、新型コロナ肺炎向け画像診断支援AIシステムの画面
出所:エムスリーAIラボ

 国内でも新型コロナが流行しつつあった2020年1~2月ごろ、すでに多くの患者が発生していた中国では、複数のAI企業が新型コロナ肺炎を検出するアルゴリズムを開発していた。「何社かのAIアルゴリズムを比較した。このうちアリババのAIは精度が最も高く、良いと判断して一緒に話を始めた」と杉原所長は振り返る。

 アリババが中国で検証した際の精度は、新型コロナ肺炎患者を陽性と正しく判断する割合を指す「感度」が98%、新型コロナ肺炎でない患者を陰性と正しく判断する割合「特異度」が99%で、機械学習の精度を示す指標「AUC(Area Under the Curve)」も0.99と高精度だった。実際に日本の医療機関で利用する際の精度は変わり得るが、十分に実用に足ると判断した。

 今回エムスリーが採用したAIアルゴリズムは、中国の新型コロナ患者3067例を含む計7038例のCT画像を学習データとして、深層学習を活用してアリババが開発した。杉原所長は「このデータ量の多さが高精度のポイントだ」とした。