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ステレオカメラを3倍以上に広角化

 ヴァレオと同様、日立オートモティブシステムズが開発した次世代ステレオカメラも、ハードのソフトの両方を改良して、遠⽅と近距離の両⽅の障害物検知を可能にした。同カメラを自動ブレーキ用センサーに使うと交差点に対応できる。

 日立オートモティブのステレオカメラは現在、SUBARU(スバル)やスズキの先進運転支援システム(ADAS)用センサーに採用されている。スバルの「アイサイト」で使うカメラは基線長(左右のレンズ間距離)が350mm、スズキの「セーフティサポート」で使うカメラは基線長が160mmである注4)

注4)日立オートモティブのステレオカメラには、3世代の製品がある。スズキの小型車「イグニス」に採用されている第1世代と、同社の「ソリオ」や「ハスラー」など5車種に搭載されている第2世代、今回開発した第3世代の次世代カメラである。

 今回の次世代ステレオカメラは、スズキの小型車「ソリオ」や軽自動車「ハスラー」など5車種に採用されている第2世代のステレオカメラをベースにして開発した。第2世代のカメラよりも検知距離を伸ばしながら、3倍以上の広角化を実現した。

 次世代ステレオカメラの大きさや質量は第2世代カメラとほぼ同じで注5)、コストも第2世代カメラと同水準にした。コストアップをできるだけ抑えるために、ハード面の改良は最小限にとどめた(図7)。

注5)第2世代ステレオカメラの寸法は長さ210×奥行き60×高さ36mmで、質量はわずか300g。第1世代のステレオカメラより約65%の小型化と約57%の軽量化を実現している。新世代カメラの寸法と質量は、第2世代とほぼ同じである。
図7 日立オートモティブのステレオカメラ
図7 日立オートモティブのステレオカメラ
次世代カメラは、第2世代カメラをベースにして開発した。カメラの写真は第2世代で、日立オートモティブ提供。
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 具体的には、左右のカメラを第2世代より少し広角にした。CMOSセンサーの画素数は第2世代カメラ(120万画素)より少し増やし、画像処理チップの処理速度も第2世代カメラより少し速くする程度にした。

 ソフト面では、映像の撮影方式を変更した。第2世代カメラでは、左右のカメラで車両前方の正面を撮影し、両方のカメラで撮影した映像の重なる部分を立体視して対象物を検知する。ただ、この方式では水平視野角は40度であり、交差点対応は難しい。

左右のカメラで撮影する範囲をずらす

 次世代カメラでは、左右のカメラで撮影する範囲をずらす方式を採用した。具体的には、左のカメラで右前方を撮影、右のカメラで左前方を撮影する。これにより、従来よりも3倍以上広い(120度以上)の水平視野角を確保した(図8)。

図8 第2世代と次世代の方式の違い(日立オートモティブ)
図8 第2世代と次世代の方式の違い(日立オートモティブ)
映像の撮影方式を変更したことで、検知距離を維持しながら、従来の3倍以上の広角化を実現した。日立オートモティブの資料を基に日経Automotive作成。
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 高速道路におけるACCや車両前方の障害物を対象にした自動ブレーキの場合は、水平視野角が広くなくても対応できる。そのため、通常のステレオカメラとして機能させる。左右のカメラで撮影した映像が重なる中央部は、従来と同じように立体視して対象物を検知する。ACCなどの性能を落とさないため、検知距離は従来と同じ120mを確保した。

 一方、交差点の右左折を対象にした自動ブレーキでは、水平視野角が広い方が障害物を検知しやすい。そこで、ステレオカメラを2つの単眼カメラとして機能させる。

 左右のカメラでそれぞれ撮影した周辺部は、単眼視によって対象物を検知し、時系列の画像処理によって立体物として認識する。中央部の立体視と周辺部の単眼視の仕組みをシームレスに連携させて、広角化と検知距離の維持を両立した。

 また、交差点における車両や歩行者、自転車などの検知性能を高めるため、次世代ステレオカメラでは第2世代カメラと同様、画像処理プロセスに機械学習を適用した。画像処理用マイコンに多くの教師データを格納。カメラで撮影した映像と教師データを照合して、車両や歩行者、自転車かどうかを判定する。

 ただ、画像処理プロセスに機械学習を適用すると、処理するデータ量が増える問題がある。そこで、第2世代カメラと同様のチップ構成を採用し注6)、高速処理に対応した。

注6)画像処理用と画像認識用のマイコンを1チップ化し、マイコンの数を従来の3つから2つに減らした。その上で、画像認識に使う半導体コアを2つに増やした。コアの数を増やすことで画像認識の処理速度が上がり、機械学習の適用が可能になった。