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自動ブレーキを交差点の右左折に対応させるためのアプローチは各社で異なる。トヨタ自動車のシステムはセンサーを2個使い、カメラのソフトの改良だけで実現した。フランス・ヴァレオ(Valeo)は、単眼カメラのハードとソフトを改良する道を選んだ。日立はステレオカメラを2つの単眼カメラとして機能させて広角化する方式を開発した。

 自動ブレーキを交差点に対応させるには、センサーのハードウエアとソフトウエアのいずれか、あるいは両方を改良する方法がある。どの方法を選ぶにしても、コストをなるべく抑えながら性能を高めることが求められる。トヨタ自動車の新型「ヤリス」に搭載する自動ブレーキは、センサーのハードは変えず、ソフトの改良だけで交差点の右折時の対向車や、右左折後の横断歩行者に対応した。

 トヨタのヤリスは、同社のADAS「Toyota Safety Sense(第2世代):TSS2」の改良版を搭載する。同車の開発責任者で、Toyota Compact Car Company TC製品企画 ZP チーフエンジニアの末沢泰謙氏は、「ヤリスは世界の多くの人々に乗ってもらえるクルマであり、新型車の開発に当たっては安全・安心を重視した」と話す(図1)。

図1 新型「ヤリス」開発責任者の末沢泰謙氏
図1 新型「ヤリス」開発責任者の末沢泰謙氏
「ヤリスは世界の多くの人々に乗ってもらえるクルマ。安全・安心を重視して開発した」と話す。(出所:トヨタ自動車)
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 ただ、小型車は中大型車に比べて、開発費に制約があり、中大型車と同等のコストはかけにくい。そこで、コストをなるべく抑えるため、ソフトの改良だけでヤリスの自動ブレーキを交差点の右左折に対応させた注1)

注1)レクサス車では、20年6月に部分改良した中型セダン「IS」の自動ブレーキが交差点に対応する。ヤリスと同じシステムを搭載する。

カメラのハードは改良前と同じ

 ヤリスの自動ブレーキ用センサーは改良前のシステムと同様、単眼カメラとミリ波レーダーを使う。改良版TSS2の開発を担当したトヨタ自動運転・先進安全開発部でガーディアンPTグループ長の近藤諭士氏は、「単眼カメラのソフトの改良だけで対応した」と述べる。カメラのハードの仕様は、改良前のシステムと同じである。

 自動ブレーキを交差点に対応させるには、自車前方のより広い範囲の対象物を検知するために、カメラの広角化などハードの改良が必要とされる。なぜトヨタは、ソフトの改良だけで対応できたのか。

 センサーのハードとソフトを改良すると開発期間が長くなりがちで、開発コストも増える。ソフトの改良だけであれば開発期間を短縮でき、コストも抑えやすい。そこで今回トヨタは、カメラのサプライヤーと共同でソフトの改良に取り組んだ。

 TSS2の改良版では改良前と同様、主に単眼カメラを使って自車前方の車両や歩行者を検知する。ミリ波レーダーの情報も使う。交差点における右折時に対向車と衝突の危険があるとシステムが判断すると、自動でブレーキをかける(図2)。

図2 交差点における右折時のイメージ
図2 交差点における右折時のイメージ
対向車と衝突の危険があるとシステムが判断すると、警報音で運転者に知らせるとともに、自動でブレーキをかける。(出所:トヨタ自動車)
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 トヨタによると、従来の自動ブレーキと、交差点の右左折を対象にする今回の自動ブレーキの最大の違いは、自車が旋回することにある。従来の自動ブレーキは主に自車が直進している状態で、先行車や道路を横断する歩行者を検知して作動させていた。