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トヨタのRAV4、夜間性能の高さを示す

 RAV4を除くトヨタの4車種の自動ブレーキはいずれも、同社のADAS「Toyota Safety Sense(第2世代):TSS2」注1)と、高機能ヘッドランプ注2)を搭載する。自動ブレーキ用センサーは、デンソー製の単眼カメラとミリ波レーダーを使う。

注1)レクサス車の場合は、「Lexus Safety System +(第2世代版)」と呼ぶ。TSS2と同じシステムである。
注2)ハイビームで走行していても照射エリアごとに照射・消灯できる機能を備えたヘッドランプを指す。前方車(先行車や対向車)がある場合でも、前方車以外にはハイビームを照射でき、急な歩行者の飛び出しを検知しやすい。前方車がある場合に、ハイビームからロービームに切り替える自動ハイビームよりも試験では有利になる。

 これに対してRAV4もADASにはTSS2を搭載するが、ヘッドランプの機能は自動ハイビーム注3)にとどまる。カメラに自動ハイビームを組み合わせた自動ブレーキは、高機能ヘッドランプを組み合わせる場合よりも夜間歩行者を発見しにくい。こうした条件でも、RAV4の自動ブレーキは街灯なしの試験で満点を獲得し、カメラの夜間性能の高さを示した(図2)。

注3)カメラを使って前方車のヘッドランプやテールランプを検知し、ハイビームとロービームを自動で切り替える機能のこと。
図2 トヨタの中型SUV「RAV4」
図2 トヨタの中型SUV「RAV4」
対向車がある場合とない場合の全ての試験条件で、ダミー人形との衝突を回避した。夜間性能を向上させた単眼カメラで、主に歩行者を検知する。ミリ波レーダーの情報も使う。(撮影:日経Automotive)
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 カメラの夜間性能を高めるためにトヨタとデンソーは共同で、ハードウエアとソフトウエアの両方を改良した。

 ハード面では、カメラのレンズから多くの光を取り込めるようにした。カメラに搭載するCMOSセンサーのダイナミックレンジを広げて、明るく映る対象物から暗く映る対象物までを捕捉できるようにした。また、CMOSセンサーで撮影した多くの画像を短時間で処理できるようにするため、画像処理チップの処理速度を上げた。ソフト面では、パターン認識のアルゴリズムを改良した。

セレナ、カメラのソフト改良で巻き返し

 日産のセレナの自動ブレーキは従来、単眼カメラだけで昼間の歩行者に対応していた。昼間歩行者を対象にしたJNCAPの自動ブレーキ試験(17年度)では満点を獲得し、性能の高さを示した。同カメラはドイツZF製であり、イスラエル・モービルアイ(Mobileye)の画像処理チップ「EyeQ3」を搭載する。ただ、従来の単眼カメラは夜間歩行者の対応が難しく、トヨタなどの自動ブレーキに先行されていた。

 自動ブレーキを夜間歩行者に対応させるため、セレナの19年8月の部分改良で、夜間の検知性能を高めたZF製の単眼カメラを搭載した。また、昼夜の検知性能に差がないミリ波レーダーをセンサーに追加した。さらに高機能ヘッドランプを、日産車として初めて搭載した。こうした改良によって、自動ブレーキを街灯なし夜間の歩行者に対応させた(図3)。

図3 日産の中型ミニバン「セレナ」
図3 日産の中型ミニバン「セレナ」
ソフトを改良して単眼カメラの夜間性能を向上させた。ミリ波レーダーを併用することで、街灯がない環境下の試験で満点を獲得した。(出所:日産自動車)
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 夜間性能の向上に最も寄与したのは、単眼カメラの改良である。カメラの夜間性能を高めるには、ハードとソフトのいずれか、もしくは両方を改良する方法がある。日産はハードを変えず、モービルアイと共同でソフトを改良した。量産車のセレナに搭載するには、カメラのコストをできるだけ抑える必要があったためである。

 通常、単眼カメラで撮影した対象物の判定には、パターン認識の手法を使う。カメラに搭載するEyeQ3は、画像認識処理のプロセスに機械学習を適用しているため、撮影したデータから効率良く条件を見つけられる。

 セレナの単眼カメラではハードの仕様は変えず、撮影した画像と照合する教師データを増やして、夜間の歩行者を認識しやすくした。この改良型カメラは、デイズや小型車「ノート」にも搭載されている。日産は今後、他の車種にも展開する計画だ。

ポロ、ミリ波レーダーだけで対応

 これまで見てきた車種の自動ブレーキが、カメラとミリ波レーダーを併用して夜間歩行者に対応したのに対して、VWのポロはカメラを使わず、ミリ波レーダーだけで夜間歩行者を検知する(図4)。

図4 VWの小型車「ポロ」
図4 VWの小型車「ポロ」
他車の多くはカメラとミリ波レーダーを併用するが、ポロはミリ波レーダーだけで夜間歩行者を検知する。(撮影:日経Automotive)
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 同レーダーはドイツ・コンチネンタル(Continental)製であり、フロントグリル中央のエンブレム裏に搭載する。カメラとミリ波レーダーを併用するシステムに比べてコストを抑えられるため、価格が安い小型車にも搭載しやすい。

 通常、夜間歩行者の検知にはカメラを使う。カメラは形状認識に優れており、対象物を歩行者であると判定しやすい。これに対してミリ波レーダーは、対象物の検知に反射波の強度などを使う。

 ミリ波レーダーはカメラと異なり、昼間と夜間で対象物の認識精度に差はないが、課題もある。反射波の強度が大きい車両は認識しやすいが、反射波の強度が小さい歩行者の認識は難しいとされていた。

 コンチネンタルのミリ波レーダーを用いた自動ブレーキは、歩行者が道路を横切ったときに作動し、歩道に立ち止まっているときには作動しない。人が歩いているときには手足が前後(車両から見ると左右)に動く。歩行者の手足からの反射波は、車両からの反射波より強度は小さいが、その強度には「ばらつき」がある。

 一方、立ち止まっている歩行者は手足が動いていないため、反射波の強度のばらつきが小さい。こうした強度のばらつきの差を基に、対象物が「横断している歩行者である」と認識する仕組みである。