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床上30cmも床上1mも変わらない

 八代市で深刻な住宅の浸水被害が発生した坂本地区も、約3mのかさ上げ工事を99年に終えていた。にもかかわらず、浸水はかさ上げした地盤面から約4.3mの高さに達し、複数の住民がヘリコプターで救出された。坂本地区では2人の高齢者が住宅内で溺死した。

 2階を住まいにした店舗併用住宅Eに住むE氏は、2階からヘリコプターで救出された1人だ。「2階にいても水がじわじわと腰の高さまで上がってきて恐ろしかった」とE氏は振り返る。

 建物は、店舗のある1階から2階に行くために、いったん1階の出入り口を出て外階段を通らなければならないつくりだった。しかし、浸水で1階の出入り口が開かなくなり、窓ガラスを割って外に出るという危機をE氏は体験した。

球磨川に架かる坂本橋のすぐそばに立つ、2階を住宅にした店舗併用住宅Eは、2階の腰高まで浸水した。住民は2階の住居部分からヘリコプターで救助された。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
球磨川に架かる坂本橋のすぐそばに立つ、2階を住宅にした店舗併用住宅Eは、2階の腰高まで浸水した。住民は2階の住居部分からヘリコプターで救助された。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
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 E氏の経験では、地盤をかさ上げする前の大洪水で、高さ2.75mまで浸水したのがこれまでで最大だった。「大洪水の後はここで商売を続けるのをやめようと思ったが、3mも地盤をかさ上げするというので考えを変えた。今回の豪雨でここまで浸水するとは、誰もが思ってもみなかった」とE氏は話す。

 坂本地区では、支所に通じる国道と県道の一部が豪雨で土砂に埋まった。そのため、豪雨から2週間以上たっても通行止めの状態が続き、応急修理工事や被災者への支援活動が遅れていた。

 店舗併用住宅Eの斜め向かいに立つ、ピロティ形式の2階建て住宅Fに住民が戻ることができたのは豪雨から約2週間後だった。

坂本地区に立つピロティ形式の2階建て住宅Fでは、ボランティアがバルコニーや2階の床上にたまった泥を取り出す作業を行っていた。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
坂本地区に立つピロティ形式の2階建て住宅Fでは、ボランティアがバルコニーや2階の床上にたまった泥を取り出す作業を行っていた。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
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 住宅Fはピロティの階高を比較的高くしていたため、浸水は2階の床上30cm程度で止まっていた。しかし、住民のF氏はここに住み続けるかどうかを決めかねている。

 床上30cmの浸水で泥だらけになった住宅と家財は、床上1m以上の浸水と変わらないような状態に見えて、大きなショックを受けたからだ。「高い浸水リスクを抱え交通の便も悪いこの土地に、多くの改修費用をかけて住み続けるのが果たしていいのか……」とF氏は思い悩む。

床上30cmまで浸水した住宅Fの2階室内。床の仕上げ材と家具やクロスの足元に、泥がかぶさっている。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
床上30cmまで浸水した住宅Fの2階室内。床の仕上げ材と家具やクロスの足元に、泥がかぶさっている。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
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