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 企業向けにパブリッククラウドを提供する主要なITベンダーがこぞって「地上」に注力し始めている。その象徴とも言えるサービスを米Oracleが2020年7月8日に発表した。「リージョンを丸ごとユーザー企業のデータセンターに導入する」との売り文句を打ち出す「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」だ。

 リージョンはクラウドサービスを提供するデータセンター群を指す。Oracle Cloudの場合、日本国内では東京と大阪の2つのリージョンを持つ。Oracle Dedicated Region Cloud@Customerの目的は「パブリッククラウドと同様のサービスをオンプレミス(自社所有)環境で提供し、顧客が占有して利用できるようにすることだ」と米OracleでOracle Cloud InfrastructureのVice Presidentを務めるVinay Kumar氏は説明する。

 狙いは金融や公共などの規制が厳しい業種や通信事業者などの巨大システムを抱える企業だ。世界初のユーザーとして野村総合研究所(NRI)が名乗りを上げた。法規制などの関係から現在、米Oracleがリージョンを置いていないオマーンなどの国単位での導入も検討している。

野村総合研究所の世界初採用を告知する米Oracle
野村総合研究所の世界初採用を告知する米Oracle
(出所:米Oracle)
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クラウドに乗らないシステムは必ず出てくる

 Oracle Dedicated Region Cloud@Customerのように、オンプレミス環境をパブリッククラウドのように利用可能にする動きはほかにもある。Amazon Web Services(AWS)のハード/ソフト一体型製品「AWS Outposts」だ。「オンプレミス環境でAWSのサービスが利用できる」として2018年11月に発表し、2019年12月から提供を開始した。

Amazon Web Servicesの「AWS Outposts」
Amazon Web Servicesの「AWS Outposts」
(画像提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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 なぜOracleやAWSはクラウドからオンプレミス環境に降りてきたのか。その理由は、どんなにクラウド移行を進めたとしても、オンプレミス環境にシステムは必ず残ると分かってきたからだ。

 これまで主要なパブリッククラウドベンダーは「リフト・アンド・シフト」戦略を強力に推進してきた。オンプレミス環境にある業務システムを「リフト(クラウド移行)」し、その後にクラウド活用を前提に作り替える「シフト」を促す戦略だ。

 AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudといったクラウドベンダーは数年前まで「すべてのシステムをクラウドに」を目指してきた。しかし多くの企業システムがクラウドに移行する中で、「クラウドに乗らないシステムもあると分かってきた」とアマゾン ウェブ サービス ジャパンの松尾康博技術統括本部レディネスソリューション本部シニアソリューションアーキテクトは話す。

 クラウドに乗せづらい企業システムは大きく3つある。1つはオラクルが狙うように法規制関連でデータが社外や国外に出せなかったり、データを保管している場所を明らかにしたりする必要があるシステムだ。2つ目は低遅延が求められるシステムだ。工場の機器制御のように、数ミリ秒でのレスポンスが求められるケースである。

 3つ目はメインフレームなど古い技術やアーキテクチャーを利用しているシステムだ。メインフレームを移行できるサービスを用意するパブリッククラウドサービスもあるが、費用対効果などの面ですべてのレガシーシステムをクラウドに乗せることは現実的ではない。