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 オンプレミス(自社所有)環境にシステムが残るならば、クラウドをオンプレミスに導入すればいい。こう考えユーザー企業のデータセンター(DC)に自社のパブリッククラウドサービスを導入する「オンプレ版クラウド」を提供する代表的なベンダーが、米Amazon Web Services(AWS)と米Oracleだ。

 AWSは2019年12月に「AWS Outposts」を、Oracleは2020年7月に「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」をそれぞれ提供開始した。どちらもユーザー企業が所有するDCに、AWSやOracleがソフト/ハード一体型の製品を設置し、パブリッククラウドと同じサービスを提供する。AWSとOracleがそれぞれ運用・保守も手掛ける。ユーザー企業から見た場合、パブリッククラウドと同様の使い勝手を実現する。

 「パブリッククラウドを利用したい。しかしオンプレミス環境と同様のセキュリティーやレイテンシーを確保したい。こういうユーザー企業からの要望を受けて提供を開始した」。日本オラクルの竹爪慎治常務執行役員は、Oracle Dedicated Region Cloud@Customerを開始した理由をこう説明する。セキュリティーやレイテンシーのほかに、データの所在を明確にしたいシステムなどについて要望が寄せられたという。

 AWS Outpostsの提供の背景についてアマゾン ウェブ サービス ジャパンの松尾康博技術統括本部レディネスソリューション本部シニアソリューションアーキテクトは「オンプレミス環境にあるシステムのクラウド移行を進めるなかで、オンプレミス環境に残したほうがいいシステムもあると分かってきた」と話す。工場や物流倉庫内の機器の制御システム、監視カメラといったエッジで大量のデータが発生するシステムなどを「オンプレミス環境に残したほうがいいシステム」と位置づけている。

 クラウドサービスをオンプレミス環境向けに提供することで、ユーザー企業のシステムを自社クラウドに移行してもらう。この狙いは共通する両社だが、オンプレミス環境に対する考え方は大きく異なる。AWSがパブリッククラウドサービスの利用を前提にAWS Outpostsを提供するのに対し、Oracleはパブリッククラウドの利用を前提としていない。以下で両社の戦略の詳細を見ていこう。

クラウドが主、オンプレが従のAWS

 「2018年の発表から説明に行っているが、半分くらいのユーザー企業から『期待と違う』と言われる」。AWS Outpostsについてアマゾン ウェブ サービス ジャパンの松尾シニアソリューションアーキテクトはこう打ち明ける。AWS Outpostsに対して期待と違うというユーザー企業は「パブリッククラウドを利用してみたいがセキュリティーなどが不安なので、AWS Outpostsを導入しよう」という企業だという。

AWS Outpostsのきょう体
AWS Outpostsのきょう体
(画像提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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 AWS Outpostsは「あくまでパブリッククラウドの利用が主、オンプレミス環境が従という考え方。クラウドに軸足を置いた利用方法を想定している」と松尾シニアソリューションアーキテクトは説明する。オンプレミス環境のみのスタンドアロンでは利用できない。AWS Outpostsを利用するには専用線接続サービス「AWS Direct Connect」などを利用して、AWSのパブリッククラウドサービスとAWS Outpostsを接続する必要がある。

 AWSのパブリッククラウドのリージョンと接続することで、ユーザー企業から見ればAWS Outpostsを小さなリージョンとして管理できるようになる。AWSは2019年12月に「ローカルゾーン」と呼ぶリージョンよりも小規模なサービス拠点の提供を始めている。AWS Outpostsはこのローカルゾーンのような扱いになり、管理画面から見た場合はほかのパブリッククラウドのリージョンと同等に管理できるという。

 パブリッククラウドとの接続以外にも利用時の注意点がある。それはAWS OutpostsでAWS上のすべてのサービスを提供しているわけではないということだ。提供するサービスはコンピューティングサービスの「EC2」やブロックストレージの「EBS」といった基本的なサービスに加え、コンテナオーケストレーションツール「ECS」などのクラウドネーティブ開発の支援サービス、データベース関連のサービスなどだ。2020年中にはVMwareが利用可能な「VMware Cloud on AWS Outposts」も登場予定だ。