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 みずほフィナンシャルグループの新勘定系システム「MINORI」が全面稼働して1年が経過した。1980年代のシステムという「くびき」から脱したみずほFGは、業務改革にまい進中だ。MINORIによって営業店は事務作業から解放され、本来の営業に専念できるようになる。改革に伴い1000人を超える事務系職員が、新しい営業業務に挑戦する。IT子会社の統合・再編も進め、システム運用会社には日本IBMが過半出資した。MINORIを軸にみずほFGが推し進める変革の進捗を検証する。

 「数十年に一度の大改革だ」。みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は、顧客へのコンサルティングに軸足を置いた「次世代型店舗」の取り組みの意義をこう強調する。

 みずほFGは2019年7月に新勘定系システム「MINORI」を全面稼働させた。旧みずほ銀行、旧みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行の勘定系システムを一本化し、老朽化していた旧勘定系システムからの脱却を果たした。

 それから1年、みずほFGはMINORIを活用した営業店や商品・サービス開発の改革を進めている。IT関連の組織再編にも手を付けた。そのなかの目玉が、次世代型店舗の展開だ。

1100人を「フロントシフト」

 次世代型店舗では、従業員は資産運用など顧客へのコンサルティングに注力する。その一方でこれまで営業店が担ってきた預金関連の処理や問い合わせ対応といった膨大な後方事務は「ビジネスオフィス(BO)」をはじめとした事務センターに集約する。

図 従来型店舗と次世代型店舗の比較
図 従来型店舗と次世代型店舗の比較
次世代型店舗は顧客へのコンサルティングに軸足を置く(写真提供:みずほフィナンシャルグループ)
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 こうした動きに伴い、これまで店舗のカウンターの後ろで事務を手掛けていた担当者は、顧客と直接やり取りするフロント(店頭)に出たり、近隣のBOに異動したりする。みずほFGは2021年3月期に、後方事務を担っていた約1100人をフロントにシフトさせる計画だ。

 既に2019年から希望者を募って研修を始めている。約3000人が受講済みで、口座開設の支援など取引の窓口役になる「フロントアドバイザー(FA)」や、資産形成や運用の相談に乗る「ライフプランアドバイザー(LPA)」に役割を転換する。

 これまでも支店ごとに「個人RM(リレーションシップマネジメント)」と呼ぶ営業担当者を配置し、個人RMが主に顧客の元に出向いて様々な相談に乗っていた。一方で「店頭に来る顧客へのコンサルティングはやや手薄だった」(みずほFGの籔田太郎リテール・事業法人業務部ネットワーク改革チーム次長)。こうした弱点をFAやLPAが埋める狙いだ。「比較的若い世代の顧客はこちらから電話をかけてもなかなかつながらない。だからこそ住所変更などで来店して頂いた時は関係構築のチャンスだが、今まではこうした機会を逃していた。今後はこうしたチャンスを捉えていきたい」(籔田次長)。

 みずほ銀行の旧勘定系システム「STEPS」は1988年の稼働であるため設計が古く、営業店で受け付けた申し込みに関する事務は、その営業店で完結させる必要があった。そのためみずほ銀行の営業店には「特定職」と呼ぶ事務系職員が多数在籍していた。勘定系システムが足かせとなって、30年以上前の事務フローを変えられず、営業店改革を進められずにいたのだ。

 MINORIによってこれが大きく変わった。従来は店舗単位で管理していた顧客情報が全店共通になったため、多くの事務を事務センターに集約できるようになった。

 さらに2020年10月からは、顧客が店頭にあるタブレットを操作することで、口座開設や住所変更、入金、出金など主要8業務が完結するようになる。富士通製のタブレットを1店舗当たり7~8台配備する。導入台数は全国で約3000台に達する。

 従来は顧客が記入した伝票の内容を事務系職員が営業店端末に入力していた。以前から営業店ではタブレットも使っていたが、顧客が入力した内容はいったん紙の伝票に印刷していた。その伝票にはQRコードがついていて、営業店端末のスキャナーで読み取ると情報が端末に取り込まれ、勘定系に入力される仕組みだった。それが今後は、顧客が入力したデータはMINORIが備えるグループ会社向けのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)ゲートウエイ経由で、勘定系に直接送られる。