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 今回は「結合剤噴射法」について解説する。インクジェットヘッドを使う点は「材料噴射法」(2021年2月号参照)のアディティブ製造装置(3Dプリンター)と同じだが、造形材料そのものを吐出する材料噴射法とは異なり、結合剤噴射法では造形材料を固めるための結合剤(バインダー)を吐出するのが特徴だ。

造形プロセス 

 造形材料は粉末状となっており、これを造形エリア全体に敷き詰めておく(図1)。その表面に対して、上方から断面形状となる部分だけにインクジェットヘッドからバインダーを吐出して硬化させる。1層分の造形が完了すると、造形エリア全体の粉末材料を1層分だけ下げ、その上に次の層の粉末を供給して同じプロセスを繰り返す(図2)。

図1 結合剤噴射法のアディティブ製造装置
図1 結合剤噴射法のアディティブ製造装置
カバーを開けて造形エリアを見えるようにした状態。インクジェットヘッドが前後に往復運動しながら左右に動いていく。(出所:ACSP)
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図2 結合剤噴射法のアディティブ製造装置における造形プロセス例
図2 結合剤噴射法のアディティブ製造装置における造形プロセス例
平らに敷き詰めた粉末材料の上面に、インクジェットヘッドによって選択的にバインダー(結合剤)を噴射する。(出所:ACSP)
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サポート部は不要でカラー化が可能

 このような造形プロセスのため、立体モデルの周囲を未硬化の粉末が満たした状態で造形が進む。つまり、立体モデルを未硬化の粉末が支えるので、基本的にはサポートは不要である。

 だだし、未硬化の粉末材料には強度がないので、立体モデルの質量が大きくなった場合などにも十分にサポートとしての役目を果たせるかどうかには注意する必要がある。

 基本的に、粉末状であればどのような材料でも使用できる。石こうや砂、セラミックス、金属などが既に実用化されており、食品(チョコレートや砂糖などの粉末)を造形できる装置も開発された。ただし、結合剤を硬化させただけでは強度などが不足し、後工程で粉末材料のすき間に他の材料をしみ込ませる含浸処理などが必要となる場合がある。

 バインダーそのものを着色したり、バインダーとは別に複数色のインクを吐出して混ぜ合わせたりして、フルカラーの立体モデルを造形できるのも大きな特徴の1つである。現在では数百万色の表現が可能なアディティブ製造装置が実用化されている。

 ただし、この場合には粉末材料の色が最終的な立体モデルの色に大きく影響する。紙にカラー印刷する場合でも、紙が白くないときれいな発色は得られない。現実的には、石こうなど白色の粉末材料を使うアディティブ製造装置においてフルカラーが実現されている。