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 今回は「粉末床溶融結合法」について解説する。敷き詰めた粉末材料の表面に、レーザービームや電子ビームを選択的に照射して断面形状部分だけを溶かし、固めてしまう方法である(図1)。1層分を硬化させてから、造形テーブルを下げて次の層の粉末材料を供給するというプロセスは、結合剤噴射法(2021年3月号参照)とほぼ同じである。ただし、断面形状を硬化させる手段として、結合剤ではなく熱を加える点が大きく異なる。

図1 粉末床溶融結合法の造形プロセス例
図1 粉末床溶融結合法の造形プロセス例
敷き詰めた粉末材料の表面に、レーザービームや電子ビームを選択的に照射して断面形状部分だけを溶かし、1層分を硬化させる。 1層分を硬化させてから、造形テーブルを下げて粉末材料を供給し、次の層を硬化させていく。(出所:ACSP)
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造形プロセス 

 粉末床溶融結合法では、材料(樹脂や金属、セラミックスなどの粉末)を造形エリア(粉末をためるタンク)に敷き詰める。材料がストックされている造形材料バケットから、リコーターと呼ぶ装置を使って敷き詰める方式やローラを用いて敷き詰める方式などがある。

 基本的に、粉末材料そのものを熱によって溶かして固めるが、粉末材料を融点以上に加熱して溶融(Melting)させるだけでなく、粉末材料の表面が結合する「焼結(Sintering)」という現象を使って硬化させる装置もある。このため「粉末焼結」という名称も使われる。焼結では粉末と粉末の間に生まれる空間が大きいため密度が小さくなり、軽量化にはつながるが、機械的強度は下がる。強度を増すには、後で含浸処理などが必要になる。

 砂などのように融点が高い材料をメインの材料(基材)として使う場合には、樹脂などの融点が低い材料で基材をコーティングしたり、樹脂の粉末を混在させたりといった方法を採用する装置もある。

 また、装置本体以外の付帯設備も多く、粉じん爆発などの防爆設備や空調設備が必要となる。システム全体が大がかりで導入費用は他の手法と比べて高額になりがちである。

金属にはレーザービームと電子ビーム

 光源としては、レーザービームを使うタイプと、電子ビームを使うタイプに大きく分かれる。

 レーザービームとしてはファイバーレーザーやYb(イッテルビウム)レーザーなどが使われ、液槽光重合法(光造形法)と同じようにガルバノミラーで走査する(図2)。なお、造形中に金属粉末が酸化するのを防ぐために、Ar(アルゴン)などの不活性ガスを造形エリアに充填する場合が多い。

図2 造形エリアにおいて粉末材料を溶融・結合させている様子
図2 造形エリアにおいて粉末材料を溶融・結合させている様子
白く光っている部分にレーザーが照射されている。ガルバノミラーで高速に走査する。装置によっては複数本のレーザーを同時に照射して造形の高速化を図っている。(出所:ACSP)
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 一方の電子ビームとは、加熱した電極から放出された電子に電圧をかけて加速し、電磁コイルで収束させる方法で、電磁コイルの制御によって走査する。電子ビームは高真空中での照射が必要なため、不活性ガスなどの充填は不要である。レーザービームより高出力かつ高速走査が可能な点が特徴である。

 この特徴を利用して、断面形状を溶融・結合する前に造形面全体を加熱(予熱)して、温度差による残留応力を下げることができる。ただし、予熱で断面形状以外の粉末も少しだけ硬化(仮焼結状態)してしまうため、後工程で取り除きにくくなる。