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金属粉末

 粉末床溶融結合法で使用する材料は粉末であるため、既存工法で使用する金属材料と比べると高価である。しかし現状では、強度を持つ金属製の立体モデルを直接造形できる数少ないアディティブ製造法であり、さまざまな業界で、開発/試作用途から製品用の部品まで多彩な用途に用いられる。

 既存工法に比べれば造形時間は長く、金属といえども削り出しなどの部品と比較すると密度が若干低く疲労強度は弱い。そのため、長期にわたって使用する部品に用いる場合は注意が必要である。

 粉末床溶融結合法の造形材料として提供されている主な金属を表2に示す。マルエージング鋼やステンレス鋼、ニッケル合金、チタン/チタン合金、アルミニウム合金などがある。これら以外には、金(約75%)に銀(約12%または約4.5%)と亜鉛合金を混入した金合金や、白金(プラチナ)基金属ガラスなどを使える装置もある。

表2 粉末床溶融結合法の主な金属の造形材料
(出所:ACSP)
材料名 主な特徴や用途など
マルエージング鋼 非常に強い引っ張り強さを持っている。時効硬化によって硬度も増すため、主に金型や、現在では強靭性を特に要求される複雑・精密な機械部材や工具にも用いられている。
ステンレス鋼 耐熱性・加工性・強度など優れており、金型レスでの試作品開発、熱伝導部品などで使用できる。
ニッケル合金(インコネル) 加工材料や鋳物材料としても使われる耐熱、耐食合金。粉末床溶融結合法で造形すると硬度はHRCで平均30となるため、従来のインコネル相当の硬度(インコネル718で硬度:HRC40~46)を必要とする場合は熱処理が必要になる。
チタン、チタン合金 耐食性、耐熱性に優れる。耐食性については、特に耐海水性が強く、海水での使用が想定される部品に使われる場合がある。最近ではアレルギー反応の少ない材質として、医療分野での応用も広がっている。
アルミニウム、アルミニウム合金 粉末床溶融結合法の造形材料としては、純アルミニウムを用いることができないため、AlSi10Mg(シリコン系アルミニウム合金)が主流である。金型レスでの試作品開発、熱伝導部品などで使用できるため、自動車産業、航空機産業でのニーズが見込まれる。
コバルトクロムモリブデン鋼 摩耗、変形に強く、さびにくいため、粉末床溶融結合法の造形材料として、歯科医療分野での歯冠やブリッジのニーズが見込まれる。
金合金、白金(プラチナ)基金属ガラス 金合金は、従来手法で製造できないような複雑で緻密な宝飾品や特殊部品への応用が見込まれる。一方の白金(プラチナ)基金属ガラスは、特に耐食性が要求される医療産業、耐熱性が要求される自動車産業および航空宇宙産業の特殊部品の応用が見込まれる。

 例えばチタンは、通常の切削加工などでは加工が難しい難削材である。従って、従来の技術で加工に時間を要する材料では、アディティブ製造装置で造形する方が速く、安く製造できる場合がある。

 粉末床溶融結合の金属材料にはさまざまな種類があるが、主流として使われている材料が幾つかある。ステンレス鋼では「SUS 316L」、「同630」、ニッケル合金は「インコネル718」、「同713」、チタン/チタン合金では「純チタン」、「チタン64」、「チタンアルミ」などである

* 「インコネル」は米Special Metals社の商品名である。

セラミックス粉末

 セラミックスは金属より軽く低密度で、高い耐食性、耐摩耗性、硬度、優れた生体適合性、高耐熱性、低熱膨張といった性能を持ち、樹脂よりも重く、傷がつきにくいという特性を持つ。

 粉末床溶融結合法でセラミックス粉末を直接造形することは難しく、セラミックス粉末にバインダーを加えたものが用いられている。造形された立体モデルはバインダーを含むため、脱脂、焼結などの後処理が必要となる。

 粉末床溶融結合法で使用される砂は、人工のセラミックス砂や珪砂(シリカ砂)が使われ、主に鋳物の型用として活用される。セラミックス砂は、成分が均一で粒度分布、通気度が安定している。また、耐熱性、耐久性(耐摩耗性・耐破壊性・耐熱衝撃性)に優れている。

 粉末床溶融結合法で使用される珪砂/ジルコン砂は、焼結補助材料としてアルミナ(酸化アルミニウム)系粒子を混合し、さらに熱源による焼結を促進するために有機バインダーを添加している。有機バインダー、アルミナ系粒子は、各装置メーカーおよび材料メーカーにより違いがある。

 なお、珪砂は石英(SiO2)を主成分とし、一定のサイズを持った耐火物である。一般的に石英の比率が高い珪砂は、膨張系の欠陥が発生しやすいが、焼付き欠陥は生じにくい。ジルコン砂は、珪砂と比較して熱伝導性や接触角が大きいために、鋳型と溶湯の界面で発生する欠陥(焼付き欠陥、ガス欠陥)の防止に効果がある。

 また、アルミナは天然ボーキサイトから抽出精製する。高融点で化学的に安定しており、かつ高い熱伝導性と電気絶縁性を持ち、高硬度で耐熱性に優れるなど、常温での機械的強度のバランスが良い。有機バインダーは、結合力を高め、形状を安定させるための有機高分子(主にアクリレート系)のバインダー(結着剤)である。