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 アディティブ製造(3Dプリンティング)は機械加工や型を使った成形といった従来工法に比べて、複雑な形状を低コストかつ短時間で造るのに向いている。そのため、試作品を効率よく造る手段として当初は普及してきた。

 しかし、アディティブ製造の強みが生きるのは、試作だけではない。従来は実現できなかった形状で軽量化や一体化による組立工数の削減を実現したり、従来工法では採算が合わないようなカスタマイズ生産を実現したりできる。今回は、アディティブ製造の活用例として、生産現場の治具、最終製品、文化財の保護、個人での活用について紹介する。

生産現場の治具 

 製造業では、生産現場などにおける治具をアディティブ製造で造る例が増えている。治具は、企業単位のみならず、それぞれの生産現場における道具として、目的や用途に合わせて異なる。極端な場合は、ある部品の製造のために、一度しか使わないという治具もある。

 そのため、時間やコストがかかる製造方法を採用しづらい。このような理由から治具作製は、アディティブ製造の大きな特徴の1つである「部品1つからでも造れる」というメリットを最も生かせる用途だ。目的や用途に最適化された治具を短期間かつ低コストで入手できるようになる。

ロボットアームの先端部をカスタマイズ

 エンジニアリングプラスチックの切削加工を手掛けている八十島プロシード(本社神戸市)は、アディティブ製造による造形サービス事業も行っている。サービスを開始した当初は、主に試作品の受注が多かった。しかし、近年では自社が得意とする設計技術とアディティブ製造の造形で培ったノウハウを活かし、治具や器具などの製造を、設計から造形までの一貫したサービスとして提供している。

 その1例が、自動車業界をはじめとしたさまざまな業界の工場で活用されているロボットアームである(図1)。近年、多品種多変量生産へのニーズの高まりから、汎用性の高いロボットアームを活用した生産ラインが注目を浴びている。しかし、ロボットアームの先端に装着する治具(エンドエフェクター、物をつかむ手に相当する部分)は、さまざまな用途に合わせて1つひとつ用意する必要があり、コストも時間もかかる。

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図1 アディティブ製造で造形したエンドエフェクター
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図1 アディティブ製造で造形したエンドエフェクター
ワークの大きさや形状に合わせてカスタマイズできる。なお、可動部を含めてアディティブ製造で一体造形している。(出所:ACSP)

 アディティブ製造であれば、1つであっても比較的低コストで造れる。加えて、複雑な形状や機構のエンドエフェクターの部品点数を減らしたり、一体化したりすることも可能である。これにより顧客の細かいニーズに応えつつ、部品点数の少ないメンテナンス性のよいエンドエフェクターなどの治具を提供できる。