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 夏季の作業ではマスクを外した方が涼しくてより快適になることは想像に難くない。だが、マスクを装着した場合に、本当に熱中症を招く体温上昇の程度は増すのだろうか。軽作業を課した被験者の体温を測定し、マスク装着と体温上昇の関係を調べた。

 作業時のマスク着用の有無は、熱中症を引き起こす体温上昇にどのくらい影響するのか――。その関係を調べるために、建設作業に従事している技能者に協力してもらい、一定の運動に伴う体温変化を測定してみることにした。

 測定場所となる建設現場や被験者の手配では青木工務店(神奈川県大和市)、実験計画では早稲田大学人間科学学術院体温・体液研究室の永島計教授らの協力を得て、検証を進めた。

神奈川県内の建設現場に設置された足場を使い、20歳代の技能者2人を被験者として実験した(写真:日経クロステック)
神奈川県内の建設現場に設置された足場を使い、20歳代の技能者2人を被験者として実験した(写真:日経クロステック)
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 測定は以下のような手順で実施した。まずは被験者となる20歳代の技能者2人が、下着の上に普段から使っている作業着(上下)を着用。頭部にはヘルメットをかぶる。これを基本の服装と定めた。

 この基本着衣だけのケースに対し、ウイルスの飛沫感染を防ぐための一般的な綿100%のマスクや、アクリル板付きフェースシールドを追加で装着したケースを比較実験とした。

 体温測定に用いたセンサーは2種類ある。1つは被験者の体の皮膚温度を測るボタン電池型のセンサーだ。胸と口元にテープで留めた。このセンサーは皮膚と反対側の面の相対湿度も測れるようになっている。

口元と胸の皮膚に直接、体表の温度を測定できるボタン電池型のセンサーを貼った。このセンサーの裏側では相対湿度を測定できる(写真:日経クロステック)
口元と胸の皮膚に直接、体表の温度を測定できるボタン電池型のセンサーを貼った。このセンサーの裏側では相対湿度を測定できる(写真:日経クロステック)
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 もう1つはイヤホン型のセンサー。鼓膜からの赤外放射を検知して深部体温を測定する装置だ。体温測定とは別に、運動強度を管理するツールとして、心拍数を測れるウエアラブル端末を手首にはめてもらった。

耳にはイヤホン型の体温計を装着。鼓膜からの赤外放射を基に、深部体温を測定する。 データはリアルタイムで取得できる(写真:日経クロステック)
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耳にはイヤホン型の体温計を装着。鼓膜からの赤外放射を基に、深部体温を測定する。 データはリアルタイムで取得できる(写真:日経クロステック)
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耳にはイヤホン型の体温計を装着。鼓膜からの赤外放射を基に、深部体温を測定する。 データはリアルタイムで取得できる(写真:日経クロステック)
運動強度が大きく変動しないよう、腕には心拍数を測れるウエアラブル端末を装着してもらった。その数値が大きくぶれないようにして実験を進めた(写真:日経クロステック)
運動強度が大きく変動しないよう、腕には心拍数を測れるウエアラブル端末を装着してもらった。その数値が大きくぶれないようにして実験を進めた(写真:日経クロステック)
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 この状態で被験者は、建設現場に設置していた足場用の仮設階段を10分間昇降する。この際の運動強度は、被験者に事前に昇降運動をしてもらい、普段行う平均的な作業よりも軽めと評価された運動における心拍数を目安とした。被験者が20~30分程度は楽に継続できると感じられるレベルの運動だ。外部環境の影響を考察できるよう黒球付きの暑さ指数(WBGT)計でWBGTも測った。

WBGT計で温熱環境を計測した(写真:日経クロステック)
WBGT計で温熱環境を計測した(写真:日経クロステック)
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 実験ではさらに、マスクの装着などに伴う被験者の心理的な評価もアンケートで確認している。普段の作業着で口の周りに何も着けない場合の他、マスクやフェースシールドを着けた場合の「不快度」「息苦しさ」「集中力の低下」を、それぞれ5段階で評価してもらった。