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 技術で勝る日本企業が世界市場で負ける――。スマートフォンをはじめとしたものづくり分野で、日本企業が繰り返し受けてきた試練だ。ものづくりに固執するあまり、米Apple(アップル)のようなイノベーションを起こせず、スマホ分野で日本勢は部品メーカーしか元気がないといったありさまだ。日本がリードしているといわれる海の自動運転の分野でも同じ構図に陥るリスクをはらむ。最大の課題はシステムインテグレーターの不在だ。

産業構造の変化、巨大システムインテグレーターが付加価値を奪う

 「日本は、船舶用レーダーで世界のトップシェアを走る古野電気をはじめとする舶用機器メーカーが強い。こうしたプレーヤーが自動運航船の分野で、単なる部品メーカーに成り下がることを恐れている」ーー。日本財団の無人船プロジェクトに参加する、ある日本勢の担当者はこう打ち明ける。

 自動運航船は、レーダーやセンサーの眼でいち早く外部状況を認知し、その情報を基に危機回避する航行ルートを判断。エンジンやラダーなどを操作するといった統合的なシステム開発が求められる。こうした産業構造の変化に伴って、世界では「システムインテグレーター」と呼ばれるシステム全体の設計を担うプレーヤーが急速に力を持ち始めている。

海の自動運転の勢力図
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海の自動運転の勢力図
欧州はシステムインテグレーター主導、韓国は造船会社がリード、日本勢は海運会社が全体設計と地域ごとに主導するプレーヤーが異なる。日本勢の課題はシステムインテグレーターが不在である点だ。(出所:日経クロステック)

 その代表例が欧州勢だ。舶用機器メーカーであったフィンランドのWärtsilä(バルチラ)やノルウェーのKongsberg(コングスバーグ)といったプレーヤーが買収を重ねて事業領域を広げ、今や巨大システムインテグレーターとして船全体の基本設計やシステム開発を担うようになってきた。自動車の世界に例えると大手部品メーカーである独Continental(コンチネンタル)やデンソーが、自動運転のシステムで力を持つようになってきた構図と一緒だ。自動運航船の分野では、こうしたシステムインテグレーターが、付加価値の大部分を奪うとみられている。

 韓国や中国勢もシステムインテグレーターの領域への進出を狙う。韓国では2019年、世界の造船建造シェアトップのHyundai Heavy Industries(現代重工業)と同シェア3位のDaewoo Shipbuilding & Marine Engineering(大宇造船海洋)という大手造船会社2社が合併に合意した。世界シェアの2割を占める巨大造船会社が誕生する。「LNG船を大量受注しており研究開発余力がある。これまで最終組み立てメーカーでしかなかった韓国の造船会社が、自動運航船の分野のシステムインテグレーターになろうとしている」と、MTI(日本郵船グループ)船舶物流技術部門部門長の安藤英幸氏はみる。