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 新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、とりわけ飲食店には逆風が吹いている。政府は2020年7月28日、飲食店などのクラスター(感染者集団)対策を公表した。感染経路が追えない場合、関係者の同意がなくても都道府県は店舗名などを公表できると明記されている。

 飲食店でどのようにして「密」を避け、クラスターを発生させないようにするか。外食関係者から期待を集めるのが、店舗でのロボットの活用だ。

 外食大手のコロワイドの連結子会社であるレインズインターナショナルは、運営する東京・赤坂の居酒屋「居酒家 土間土間赤坂店」で、2020年7月30日からロボットを試験的に1台導入した。客が注文した料理をテーブルに配膳したり、食べ終わった皿を回収して洗い場に運んだりするために用い、2カ月間、運用実験を行う。

 「今日はありがとうございます。お下げできるものがあれば載せてください」

 中国Keenon Robotics(キーンオンロボティクス)製のAI(人工知能)配膳ロボット「PEANUT(ピーナッツ)」が時折こんな言葉を発しながら、店内の各テーブルを回って皿を回収する。

「居酒家 土間土間赤坂店」が導入したAI配膳ロボット「PEANUT」
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「居酒家 土間土間赤坂店」が導入したAI配膳ロボット「PEANUT」
(出所:日経クロステック)

 PEANUTは天井に貼り付けたラベルを赤外線カメラで読みながら自分の位置を認識する。3次元レーザーレーダー(LIDAR)や超音波センサー、衝突防止センサーなどを搭載しており、これらの情報を統合しながら自律的に運転する。走行時は音楽を鳴らして近づいていることを周囲に知らせる。前を横切る人がいれば止まる。

LEDディスプレーの「目」で感情を表現

 店員がタッチパネルでテーブルを指定し、料理の皿を持って行ってもらうこともできる。目に当たる部分はLEDディスプレーとなっており、笑顔やハートマークなどで感情を表現する。客が料理の皿を取り終われば、LEDディスプレーの上部、人の顔で言えば額に当たる部分に客が手をかざすと、ロボットが反応して動き出す。

 居酒家 土間土間赤坂店が導入したロボットは、POS(販売時点情報管理)など飲食店向けシステム開発を手がける日本システムプロジェクト(JSP)が国内で販売しているものだ。

 「もともと当社は店員を介さずにお客さん自身が会計を済ませるセルフレジや、テーブルに置かれたタッチパネルで注文を入力するセルフオーダーといった“セルフ化”による効率化を顧客企業に提案してきた。今度は配膳のセルフ化を提案しようと、Keenonの配膳ロボットに目を付けた。2019年11月に契約を結び、2020年1月以降、外食産業向けの展示会などで発表してきた」とJSPの長谷川洋一営業部次長は振り返る。新型コロナで予定より中国側からの納期が1カ月近く遅れ、日本では2020年3月末の発売になった。